銀高シリーズ集

□年越しするようです
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今日は大晦日。





「今年の紅白つまんねーな。」



チャンネルを変えてもあまり興味をそそるものがない。

コタツの反対側で晋ちゃんは年越し蕎麦とにらめっこ中。




「晋ちゃん食べないの?」




「箸使うの面倒くせぇ。」



実は箸がうまく使えない晋ちゃん。
手をグーの形にして箸を掴むもんだから挟むことが出来ない。



「…これじゃおせち食えないな…。」





「おせち…?」





「お正月に食べる料理。
栗きんとんとか黒豆とか…」





「甘ェ物ばっかじゃねぇか。食わねー。」





「晋ちゃんの好きなだし巻き卵とかかまぼことか海老もあるよ?」




ぴくり。
晋ちゃんの可愛い猫耳が反応する。

海老に反応したようだ。


「箸の使い方教えてあげる。」



晋ちゃんの手を掴むと、不満そうに顔をしかめる。



「親指をこうして…」



猫としての習慣で晋ちゃんは皿に顔を突っ込んで食べようとする。
しかしそんなことをすれば机が汚れるし、後片付けが大変になる。

だから簡単なフォークとスプーンを用意して、使い方を教えた。
最近は何とかそれで食べていてくれたのだが…晋ちゃんは見た目12歳くらい。

猫と言っても耳と尻尾以外は人間と変わらないのだ。

そろそろ箸を覚えさせなければいけない。




(…俺は母親か…。いや、晋ちゃんは大きくなったら俺のお嫁さんになるんだから…。)



「?何ぶつぶつ言ってんだ?」



怪訝な目で見てくる晋ちゃんと目が合った。



「いや、何でもねーよ。ほら、さっさと練習しなさい。
蕎麦冷めるよー。」



そう言うと無言で俺を睨み、箸を動かす。






ズルッ…ポチャン。




「晋ちゃん、またグーになってんだけど。」






「うるせェ。」





そーっ…ズルッ、ぼちゃっ。






「……………。」





悔しそうに箸を睨みつけ、そして俺も睨む。







「…ま、箸はまた今度練習すればいいか。フォークで喰う?」





「いい。いらねぇ。」





蕎麦食わないの?と口にしかけると、目の前に箸を差し出してきた。



「ん。」




「…?」





「お前が俺に食わせろ。」



口を開けて「早くしろ」と俺を急かす可愛い子猫。



「ハイ。あーん。」




「あー。んぐ。」




一口食べさせると蕎麦が好みの味だったらしく、もっとと催促しとくる。

晋ちゃんが箸を使えないのは、俺が甘やかしてるからなんだけど、

(可愛いからいいじゃん)
毎回この一言で済ましてしまう。


ふと日付を見ると1月1日。

トントン、と俺を叩く晋ちゃんに目を戻すと


「早く。」



口を開けて待ち構えてる子猫。



「はいはい。」




俺は今年も晋ちゃんを甘やかします!







あけましておめでとうございます!


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