銀高シリーズ集
□沖田君の憂鬱
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隣の家に、ムカつく奴がいる。
二年前に突如現れた気にくわない猫。
二年前までは、隣の家の旦那は俺だけを可愛がってくれたのに、そいつが来てから俺にあまり構わなくなっちまった。
高杉晋助…。俺はアンタが嫌いでィ。
俺を撫でてくれる旦那の手を横取りして、
俺の場所…旦那の膝の上までとっちまいやがって。
土方のヤローよりもムカつく。
アイツのいない、二年前までは…
『旦那ァ、ここは俺だけの特等席でィ。誰も乗せちゃダメでさァ。』
『心配しなくても俺の膝に座る奴なんて総一郎君だけだから。てかジャンプ読めないんですけど。』
『俺が代わりに読んであげやしょーか?
…「あぁ、旦那様、おやめください」「よいではないか、よいではないか。」そう言って男は女の帯を…
『ストーップ!!なんてとこ読んでんだよ!子供にはまだ早い!めっ!』
『いい加減ガキ扱いしないでくだせェ。』
『俺の膝乗ってる時点でガキだろーが。頭撫でてやるからむくれないの。』
俺だけの、旦那だったのに。
いつの間にか、あの人の横にいるのはアイツで。
『晋ちゃーん、銀さんイチゴ牛乳取りに行きたいんだけど。』
『あぁ。』
『…膝から降りてくんない?』
『だが断る。』
『だが断るじゃねーよ!まーたアンタはそんな厨二病語覚えてきてー、もーお母さん知りません!
…ん?何で俺お母さん?』
『知らねーよ。』
あの厨二病ヤロー、旦那の膝占領しやがって。
思い出したらまたムカつきやした。
後で土方のヤローのマヨ爆発させてやらァ。
俺は旦那を取り返すべく、アイツを追い出してやろうと考えた。
アイツが旦那の膝に乗ってたらことごとく邪魔してやるんでィ。
だから今日も、アイツに殺気を飛ばして睨みつける。
「テメェ…毎日毎日うぜぇんだよ。」
ウゼェのはこっちでィ。
「そりゃ悪かったでさァ。旦那の膝で呆けてる馬鹿面見てるとついからかってやりたくなるんでねィ。」
口論も喧嘩も負ける気がしない。
今日こそコイツを泣かしてやる。
「オイ、テメェ表出ろィ。ぶっ飛ばしてやりまさァ。」
「ここが表だバァーカ。
上等だ、今日こそぶん殴ってやらァ…。」
「はい、そこまでー。」
声に反応して見上げると、そこには旦那。
暴れる高杉を抱き上げて、ぐちぐちと文句を言っている。
かく言う俺も、いつの間にか、近藤さんにつままれていて。
面白くねェ。
何でそんな奴に構うんでィ。
複雑な目で旦那を見ていると、高杉がこっちを睨んでいる。
何見てんでさァ。
この人は俺のモンだってのに。
本当に、ムカつく野郎だ。
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