そううけっ!

□第四章
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投書箱なんて、やり方が古典的なんだよな。
江戸時代、幕府が政策として目安箱を設けたことは超有名だ。

「目安箱みたいだよな」

その投書箱を設置する作業をしているわけだ。俺は不意に思ったことを呟いた。俺は親しい人には知られているが・・・結構な歴史オタクである。日本史には滅法強く、常にトップだ。あ、もちろん他の教科もだけど、な。

歴史を学ぶと未来を学べる気がするのだ。
温故知新とか言うだろ。歴史は繰り返す。古きに学べってことはほんと納得できるんだ。
こんな俺の持論に賛同してくれて、なおかつ俺に並ぶ歴史トークができるのは・・・以外にもチャラ男の翔だった。
翔は俺から見てもかなりの歴史オタクである。正直、俺よりレベル高いぜ、あれは。尊敬の目で俺は見ている。むしろ師匠だな。
たくさんの逸話を聞かせてくれる翔との時間は、俺にとって至福の時間だ。
今もこんな投書箱を広い学内に設置するというだるい作業をできているのも、翔とめくるめく歴史トークを繰り広げられる、という理由が多くを占めている。


「目安箱って思えば、なんかいいね〜」
「だな」


自然と頬が緩む。翔も嬉しそうに顔を綻ばせる。
翔と組んだのは自分から名乗り出たからだ。俺が。
「翔と一緒に投書箱設置をする」と言った時の翔のテンションの上がり方といったら・・・俺が真田幸村コスをしたとき以上にひどかったな。
あ、コスプレは翔に強制的にされただけだからな!勘違いすんなよ、趣味ではない絶対に。
しかし存外似合ってたけどな。自分でいうのもなんだけど。


「でも〜俺さ、蜜っちゃんにプロポーズされたときマジうれしくて死にそうだったよ〜」
「ちょっと待ていつ誰が誰になんでそんなことを言った?俺は!そんなこと、言って、ねぇ!」
「あははは〜それ昔流行ったよね〜地球が何回回った〜?とかいうやつ〜」



だーめだ、こいつ。やはり日本語通じない。
俺がいつ翔にプロポースをしたのか。こいつとは歴史トークだけしていたい。



「てかさ・・作業全然進んでなくね?」
「ん〜まぁ、いんじゃない?」


副会長から言い渡されたノルマ20個で、今まだ一個目なんだけど・・これ、いけるか?
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