そううけっ!

□第六章
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急いで自室のドアを開けると、俺は想像通りの光景に頭を抱えた。


「よぉ、おかえり」
「ああ、ただいま…じゃねぇよ!」


俺のベッドに寝そべって俺の漫画を堂々と読んでいる金髪野郎を睨み付け、ソファに座り込んだ。あまりにも我が物顔でいるものだから、うっかり俺の部屋ということを忘れそうになる。
現に今、乗せられかけた。危ない危ない。


「てかさ、蜜お前エロ本の一つも持ってねーの?まさかエロ本持つ必要がないとかなのか?」
「持ってねぇよ。てか荒らすな、人の部屋を」
「…おい、まさか彼氏でもできたんじゃねーだろな」

エロ本一つ持ってないだけでなんで彼氏ができたという判断ができるのか。
エロ魔人の昴はどこか基準がおかしい。


「できてねぇよ。そもそも前提が『彼氏』ってのがおかしいだろ」
「…嘘ついてねーだろうな」


久しぶりに会っていきなりそれかよ。
俺に彼氏ができるわけねーだろ。俺は男には興味ないんだよ。
彼氏はいません宣言をしてやると、昴はにやりとエロイ顔で笑った。
だってこいつ…無駄にフェロモン出し過ぎなんだよ。


こいつ…六条昴(ろくじょう すばる)は俺の昔からの友人である。まあ、姉ちゃんの親友の弟で、俺と同い年だったので、彼とはそのことがきっかけでかなり仲良くなった。
ただ、昴の家が小学校6年の時に引っ越したため、今まで必然的に疎遠になっていた。
それこそ、当時は携帯なんて持っていなかったので、昴と連絡ができることもなく。
お互い会えないまま、今日を迎えていた。
当時から仲は良かったけれど、昴は俺をいじめることが多かった。いじめる、というよりはいじる…と言った方が正しいか。
やたら俺にいたずらを仕掛けてきて、ちょっと俺は嫌になったりもしたけど、俺より背が高くてなんでも器用にこなせて、いざという時は俺の味方でいてくれた昴が俺は大好きだった。


あの時から少し時間が経ったけれど。
やっぱり俺様な昴は変わらずかっこよかった。
なんせ、俺様なのがかっこいい、と思い、そう振る舞うようになったきっかけは昴だからだ。死んでも本人には言わないけど。


「なんだよ、俺のこと見つめて。俺の美貌に惚れたか?」
「はぁ?何わけわかんないこと言ってんだよ」
「ははっ、蜜は変わんねーな」


昴は綺麗な顔を笑顔に変えて笑った。少し気障な仕草も、悔しいが嫌味な程似合う。


「ほんと、変わんねーな…でも、今の方がもっと可愛いな」
「はぁ?目、大丈夫か」
「…ふっ、マジで会いに来てよかった」

あれ、なんでこんなに距離が近くなってんだ。
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