そううけっ!

□とりっぷ!
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俺は私立桜ノ宮学園に通う一ノ瀬蜜という。
自分でもなんだが、この学園で俺を知らない奴はいない。だって俺は生徒会長だから、一応。

生徒会長と言えば聞こえはいいし、華やかなイメージがあるだろう。実際、俺の通う桜ノ宮学園は煌びやかで豪華だ。ここまで豪華絢爛な学園もあまりないだろう。
けれど、実際の生徒会の仕事と言えば、かなり地味だ。裏方の仕事がメインだし、それも結構ハードだ。残業代とか出てもいいんじゃないかとか思ったりする。


そして俺は遅くまで残っていつものように書類の整理をしていた。


「ねえ、蜜っちゃん、そろそろ休んだら〜?」
「いや、俺はまだ終わってねぇ。翔は終わったんだろ?」


間延びした声は生徒会会計、三橋翔のもの。
翔は自分の仕事を終えたらしく、俺に声をかけてきた。大方、俺の残っている仕事を手伝うとか言い出すんだろう。いつものことだ。


「ねえ、蜜っちゃん、俺終わったから手伝うよ〜?」


ほら、やっぱり。
翔だってここ数日寝てないで作業をしてたはずなのに。綺麗な顔して微笑んでるけど、その表情には疲労の色が滲んでいた。


「いや、いいって。お前だって寝てないだろ?」
「蜜っちゃんだって寝てないじゃん」
「なるほど、翔は本当に寝てないんだな」


あ、と声を漏らす翔。今のお前の発言で翔は寝ていないことが確定したのだ。これで彼を返す理由は十分だ。生徒会長として、たとえ生徒会役員であったとしても、俺の仕事の都合でこれ以上一生徒に無理はさせられない。
俺が残っているのは、自分の仕事が終わっていないという理由なのだから。
それが翔に無理をさせる理由とはならない。


俺が言わんとしていることを賢い翔はどうやら読み取ったようだった。


「うう…蜜っちゃんには敵わないなぁ〜」
「お前は帰って寝ろ」
「…は〜い」


絶対に納得していない、しぶしぶというような感じで彼は出ていった。

「蜜っちゃん優しい!だいすき!」

という意味不明な言葉を残していったが、そこはスルーしておこう。




「さて…あとちょっと、やっちまうか!」


俺はミルクコーヒーを啜ると、一気に書類を片付けようと、気合を入れなおしたのだった。








「…はぁ…終わった…」


思わず机に突っ伏したのは、気合を入れたあの時からすでに2時間経過していた。
さすがに毎日の睡眠不足がたたったのか、終わったと同時に脱力感が半端なかった。
ああ、俺こんなに疲れていたのか、と実感して、ちょっとジジくさいな、と一人きりの生徒会室で苦笑した。




「あー…やべ…マジで寝れそう」


終わった、という安心感で蜜は満たされていた。眠気覚ましに、と飲みかけていたミルクコーヒーの威力ももう切れたのだろうか。
蜜はゆっくりと、夢の世界へと誘われていったのだった。











『…い!…っ!』

「…んだよ…」

『…い!おい!』


どこからか声がする。
どこか聞いたことのあるような、でもなんだか知らないような…
高くて可愛らしい声が俺を呼ぶ。
あれ、もしかしなくても…女?
でも、ここは男子校だし…

これは夢なんだな…
夢見るくらい自分は飢えていたのかと少しショックになりながらも、眠気が優るのでその可愛らしい声は無視することにした。



「おい!おきんか!痴れ者!」
「…った!!」




頭に鈍い衝撃が走って、俺は思わず声を上げて飛び起きた。

ぼやけていた視界がゆっくりと明るく、開けていく。
次の瞬間、蜜は目を瞠った。まだ夢を見ているかと思った。




「…ここ、どこだよ…」




目を開けると、そこは全く知らない世界でした。
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