そううけっ!

□とりっぷ!
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「…なんとなくは…理解できた。できれば理解したくねぇがな」

「ほほう、さすがは一ノ瀬蜜じゃな」


俺はこの偉そうな妖精にかーなーり大雑把に説明を受けた。

「お前はサクラ王国に飛ばされたんじゃ、帰り方は知らん」


信じられるか?これだけの説明で理解しろっていうんだぞ。
まあ、そんな横暴さも俺の姉貴の容姿だからなんとなく受容できる俺の慣れが恐ろしい。
うん、姉貴なら説明めんどいから知りたきゃ自分で調べろ、って丸投げするに違いないからな。


「こういう時ってさ、なんか役目があって飛ばされた〜とかじゃねぇの?」
「さあな」


えええ〜?俺はなんの意味もなく飛ばされたのか?

「じゃあなんで、お前は俺の姉貴の容姿なんだ?」
「さあな」


またそれかよ。

RPGとかはあんまやったことがないけど、翔とかがやってたゲームでは、主人公は勇者で、いろいろ任務をこなして最終的には魔王を倒していく〜とかそんなんだった気がする。

ということは…


「俺は勇者か?」
「…まあ、お前が自分を主人公だと信じてるならそれでよいわ」
「…おう」


なんかすごいため息つかれたんだけど。
俺しかここに飛ばされてないってことは、つまりは俺は勇者でしかない、ってことだろ?
うん、それで間違いない。
というか、それであってくれ。役目がない通行人Aとかダサすぎる。



「誰もお前だけなぞ、いっとらんが?」
「え!まじで?!誰かほかにいんの?」
「おらん」
「…あ、そう…」


このいい加減さは間違いなく俺の姉だ。
この妖精、まじで生まれ変わった俺の姉ではないかと思うのだが。



そんなのんきな会話をしていると、不意に背後で草が揺れる音がした。



「…誰かいるのかっ!」


音だけじゃなく、誰かに見つけられたようだ。低い声が明らかに俺に向けて発されている。



やっべ…武器もなんも装備していない勇者なんか弱すぎるだろ…!


一ノ瀬蜜、属性:勇者(仮)。初っ端からピンチっぽいです。
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