短編小説

□短い短いお話
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狐目×猫目





「ねぇ、猫嶺くんってば前髪切ったでしょ」

ほらきた。この些細な変化に気づくこいつ。

無視の意味を込めて沈黙を通せば、勝手に都合よく正解したと解釈したらしく、奴の目がより一層横に長く細められた。


「お前は俺の彼女か」
「えへへ俺は猫嶺くんの彼氏だよーん」
「…」

こういうやり取りにも慣れつつある自分がいやだ。
にやにやしつつ俺を眺めるこいつは狐ヶ崎という。にやにやした顔がどうも狐にしか見えない。
切れ長の目はセクシーだと女子には人気らしい。俺からしたら狸を化かす狐そのものだ。
ちっ、今だってそれが本心か何なのか分かったもんじゃない。

そしてこいつは愛想のない俺になぜかずっとなついて離れない。
たいていの人間は俺の目つきの悪さに引いていく。表だって俺を攻撃する奴はいないが、距離をとられているのはわかる。まあ、取っつきにくのは自覚ずみだ。


「俺ね、人になつかない猫って超可愛いと思うしいじめたくなるんだよね〜」
「は?何か言ったか」
「ううん、なんにも」


そう言って奴の目がまた弧を描いた。



***end
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