短編小説

□委員長がご乱心なのですが
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1 委員長、落ち着いてください




突然ですが、僕は非常に困っています。
それもこれも、同じ委員会の先輩が原因なのです。


「いつき!!好きだ、俺と付き合ってくれ!」
「どこにですか」
「ああっ!そんな天然な答えも可愛いなぁもう!でも毎日アタックしてるんだから、そろそろ俺も答えがほしいところなんだが」
「意味わかってるからこそ、こうやって回避しようとしてることわかってください、委員長」
「んー、つれないっ!」


だがしかしそこが可愛くていい!と意味不明かつ鳥肌の立つ言葉を並べ立てるのは、僕が所属する風紀委員会の風紀委員長、佐藤委員長だ。
先輩相手には失礼かもしれないが、この人は正直あほだ。なんで僕に構うのか訳が分からない。

風紀委員長といえば、この学校ではかなりの有名人だ。もちろん学校の風紀を束ねているという役職だけではなく、その容姿が人の目を引くのだ。
色素の薄い髪は痛んでなくてさらさらだし、ややウェーブのかかった髪を少しワックスで整えてあるのが、清潔感を漂わせ、少し切れ長な目はややきつい近寄りがたい印象を与えるが、その美貌は見つめるものを虜にする。まさに学園の風紀を取り締まる人にふさわしいのだ、佐藤委員長という人は。
しかも人望も厚く、生徒会との連携もバッチリとれていて、仕事もそつなくこなし、頭もいいので…まあ、もてる。そりゃあ半端なく。

だが…



「いつき、俺を焦らすのはよくない。さっさと俺のものに「委員長、仕事が終わりましたので帰らせていただきます」


なんでこんなに僕を構い倒すのか。

風紀委員会の初顔合わせの時に、いきなりみんなの前でモブであるはずの僕が委員長に名前を呼ばれ、あろうことか「俺と付き合ってくれ」と言われる始末。
最初は本当に「どこへですか」と素で返してしまったのだが、後々にそれが告白であったことに気づかされた。
あれ以来、毎日のように求愛されているのだ。気づかない方がおかしい。まあ、一番おかしいのは委員長だけど。
なんでだよ。ここは共学だし、別に女子の数が少ないというわけでもなく、半々くらいの割合だ。
むしろ女子が極端に少なかったとしても、委員長ならばすべての女子を虜にできるだろうに。


「いつき…っ、そ、それは浮気を発見して妻が実家に帰らせていただきますとかいう例のアレか!?」
「お疲れ様でした」
「いつき!待って、帰るなら俺も一緒に!」
「委員長、鍵閉めお願いしますね」


委員長はいつも通りのよくわからないことを口走っている。もはや対委員長スキルはかなりレベルが上がった。

僕は委員長を無視してバタンと風紀委員室の扉を閉めると、中からまだ委員長の声がした。

綺麗でかっこいい人なんだけどな。なんとももったいない人だ。


そうして僕はあくびをかきながら家路につくのであった。
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