短編小説
□続・不良な先輩と僕
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side:柳
今日は俺の大事な奴が来る日。
思い切って誘ってみてよかった。
断られたらどうしようかと思ったが、そんなこと考えているなら、行動に移した方がましだとすぐに考えた。
まあ、部屋に呼ぶということは即ち、下心がないというわけではない。
むしろ下心しかない…とは言えないよな、絶対に。
俺は部屋を片付けながら浮かんできた雑念を払おうとする。
信は素直だ。俺の周りにはいない。
まあ、俺の周りといったらあのバカしかいないからな。あのチャラ男くらいしか…
しまった、比較対象がひどすぎるし少なすぎる…
まあ、信が素直な可愛い奴ということは揺るがない。
…思えば俺は信にどう思われているのだろうか。
付き合っているんだし、好かれているだろうとは思う。
だが時折俺にびびっているような表情を見せるのも、また真実だとは感じている。
生まれたころからこの顔だし、今でもあのチャラ男にも時折「やなりん、ちょ〜顔こわいんですけど〜そんなんじゃ、信ちゃんに嫌われちゃうよ?」…ああ、いやなことを思い出した。あと一発なぐっときゃよかったな、くっそ…
余計なことを考えてはいても部屋はあっという間に片付いた。普段からあまり物を置いていないせいか、すぐに掃除は終わった。
その時、携帯が着信を知らせた。
表示される愛しい名に、思わず顔が綻ぶ。
というか、電話くれたの、初めてだよな?
…やばい、にやける。
「はい」
できるだけ動揺を知られたくないが、若干声が上ずってしまったような気がしなくもない。やべぇ、俺超ダサい…
『あの、信、です!』
電話越しに聞こえる声が、「僕は緊張しています」と副音声で聞こえるような気がして、思わず俺は笑ってしまった。
わかってるよ、お前からの電話だって。
お前からなら、どんなことよりも優先する。
さて、焦った顔をもっと俺の部屋で見てみたい…だなんて思うのは、いけないことだろうか。
俺は心を躍らせて、マンションの前でそわそわしているであろう恋人を迎えに行ったのだった。