おはなし

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抱きしめる腕が、震えた。
俺が、俺でないような、初めて感じる違和感。今までこんなにぐるぐると渦巻く感情を持ったことはない。
緊張している、とでもいうのか。俺が?馬鹿らしい、そんなもの。まるでアレルヤじゃないか。俺はアイツでも、俺は俺だ。俺も、アイツも、違うものを持っている。例えば、そうだ。この腕の中にいる存在は。俺の、俺だけのもの。たとえ、コイツが想っているのは俺じゃないとしても、それでいい。コイツは、アイツの中の俺の部分しか知らないんだから。
ああ、なんという優越感なんだろう。
俺だけが、俺、だけが。俺だけが、コイツの想いを受け止めてやれる。震える腕なんか、関係ない。ただ、キスをして、コイツを抱いてやれれば、それだけで、俺は満たされる。不安なんか、ない。俺は俺だ。アイツとは違うんだ。だから、コイツをめちゃくちゃに壊すことだって、できるんだ。

できる、はず、だ。










(愛を知らない僕らは)
(お互いがお互いでいられるように)
(2人だけで生きてきたんだ)

(でも、ね)

(僕は)

(君のその気持ちが)
(恋だってこと、分かってるよ)

(少し寂しいけど、ね、)

(僕は嬉しいんだよ。ハレルヤ)

(だから)

(彼女を壊さないであげて)

(きっと、君は)
(彼女を愛することで)
(変われるはずだよ)







*

アレルヤもハレルヤも、幸せでいてくれたらいい。

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