おはなし

□苦しいくちづけ
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暗い暗い部屋には血の臭いが漂っている。


「DIO様」

「ン?」

ふかふかしたソファに深く腰かけて、うつらうつらと微睡む私。
この部屋では分からないけれど、きっと外はまだ明るくて太陽の光がさんさんと降っているのだろう。だから、まだ眠い。
私も夜の生活にすっかり慣れてしまった。


「DIO様は、おモテになりますよね」

せっかく今、ヴァニラがいないのだから(部屋で寝てる)DIO様とのお話を楽しまなければ。
そう思ってDIO様に話しかける。

「何を言い出すのかと思えば」

そんなことか、と続いた。
クク、と笑って書斎の本を漁っていたDIO様は私の隣に腰かけた。



「昔から、女には怖がられたり、嫌われていたりしていたぞ?」

「嘘」

「本当さ」


私はすぐ右隣にいるDIO様のキレイなお顔を見る。
そしたら目が合って、唇はにんまりと弧を描いていた。
相変わらずどこまでが本当なのか分からないなあ。


「俺にとっては、女などどうでも良い存在だった」

女の生き血だけは、美味いと感じたけどな。
私から目を話して、黄昏るように話すDIO様。なんだか、ムッとしてしまう。

「…………私は?」



ソファの上で膝を抱えて、不貞腐れるみたいに言ってみた。
なんだか、拗ねてるみたい?ううん、実際面白くないもの。


「だった、と言っただろう?」

DIO様は私の肩を抱き寄せた。私は膝を抱えたまま、頭はDIO様の肩へ。

「お前と会ってからは、愛しいという気持ちが分かるようになった」

「DIO様」

「お前だけ。お前だけがいればそれでいい」

耳元で低い声が聞こえる。
DIO様はやっぱり狡いわ。こんな風に囁かれたら、何も言えない。
逞しい腕が私の首の後ろに回って、大きな手は私の髪をくしゃりと優しく撫でる。


「私と会わなかったらDIO様は他の女を愛していたのかしら」

「……お前は本当に可愛いな。ヤキモチというやつか?」

「そんなんじゃありません」

もし私がスタンド使いじゃなくて。
普通の女だったとして、DIO様に何の抵抗もできなかったとしたら。
DIO様はきっと私の生き血を啜って殺してしまうのだろうな。

いつだったか、DIO様は言っていた。
スタンド使いはひかれ合う。
私がスタンドを持っていなければ、DIO様に出会うこともなかったのだと思う。


「今、こうして俺といるだけでは不満か」

「いいえ、DIO様。私は幸せです」


「俺は幸せという気持ちは分からん」

DIO様は膝を抱えていた私の腕を解いた。
そして私の両足をソファの下へとそっと降ろす。

「だが、ずっとお前を傍に置いていたいとは思う」


「そう言ってくれるだけで私は幸せになれます……DIO、さま」


うっとりとDIO様のお顔を真正面から見ていると、DIO様はそっと私にキスをした。



DIO様とするキスはとびきりの甘さ。
まさに、とろけそう、っていうのかしら。とにかく私はDIO様とキスをするのが大好き(DIO様のことはもっともっと好きだけど)。

DIO様は私のじゃなくて、他のキレイな女の血を啜るけど他の女にキスは絶対しない。
言葉を交わしてくれるのも私だけ。
私だけ、というのがすごく特別みたいで嬉しい。


私を殺さないのは何故だか、未だに分からない。

(愛している)

本当に?

(お前だけ)

それはずっと?



貴方がキスをするとき、
私の首を両手で掴むのはどうして?

息が出来なくなるほどの激しいキスも、ふれ合うだけの可愛らしいキスも、
DIO様とだからすごくきもちいい。
私は、できるだけ長くこの幸せを感じたいな。




DIO様、
わたしをまだ殺さないでね。









3部DIO様!
やっぱり好きです。


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