おはなし

□酔っぱらい
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突然の来訪者。

「リーダー?」

どうかしたの、こんな時間に。
部屋の時計を見ればもう深夜の2時を回る所だった。
私の家の玄関で何も言葉を発することなく、我がチームのリーダーはただ立ち尽くして私を見つめるだけだ。


「リーダー?とりあえず、入ってください。構いませんから」


普段なら男を家に招き入れることなどないけれど、メローネ(変態)やプロシュート(たらし)じゃあるまいし間違ったことにはならないわ、とリーダーの背を押した。
ふわりとワインの香りが漂う。
なんだ、酔っているのね。






「お水、どうぞ」

リーダーをこの家で一番高価なふかふかのソファ(給料2年分)に座らせて、コップになみなみ注いだミネラルウォーターを渡す。
ごくりとそれを飲み干したのを見て、意識はありそうかな?と安心してから私も向かいのベッドへ座った。


「今日はみんなと飲みに行ってたんですか?」

「………ああ」

「私も誘ってくれたら良かったのに」

別に拗ねてる訳ではないから、軽く微笑んで言った。
リーダーはソファにぐったりしたようにもたれかかっている。寝てるのかしら?


「お前は休日だったから、わざわざ出るのを嫌がりそうだった」

「あら、リーダーが誘ってくれれば喜んで行きましたのに」

そうか、と小さく呟いてリーダーはまた何も言わなくなった。


コチコチと時計の針がなる。
しばらくリーダーの静かに上下する胸をぼうっと見ていたことに気づいて、苦笑いを独り溢してベッドの上にかけてあったブランケットを手に取った。
リーダーに風邪をひかれては困るわ、とそっとリーダーの体にブランケットをかけてあげる。
と、リーダーはぱちりと閉じてあった瞳を開いた。


「あ、ごめんなさい」

「……………いや。ありがとう」

「もう帰りますか?」

車出しますけど、と言ったけれどリーダーは何も言わずただ首を横に振るだけだった。



「プロシュートのように」
「え?」

リーダーを見下ろしていた私の腕をぐい、と引っ張って私を隣に座らせた。
その反動でソファが揺れる。
至近距離にあるリーダーの顔。吸い込まれるように真っ赤な瞳はまっすぐに私を見つめていた。


「プロシュートのように…………なんですか」

「…………女を口説くのは、難しい」

「な、」

私の耳許に顔を寄せてそう囁かれれば顔が赤く染まってしまうのは当然で。
リーダーの吐息が耳にかかったのが恥ずかしくて、私は咄嗟にリーダーの肩を押した。


「よ、酔っているんですか。まだ」

「……ああ。そうかもな」

だめだ。
リーダーの顔が見れない。
優しい声だけが、聞こえる。
笑っているのか、どんな顔をしているのか。


「今日は泊まっても構わないだろう?」

「え…………リーダー!なっなにっ」

リーダーは肩にある私の手を簡単に取り払って、そのまま私の頬に触れた。
否応なしに顔を上げられて、微笑むリーダーと目が合う。


「可愛いな」

「……っリーダー、いい加減に」

するりと私の顎を撫でて、リーダーの手はソファにすとんと落ちた。
優しく目を細めるリーダーの表情はいつも見せるものとは違って、ひどく私を混乱させる。

リーダーってこんなに格好良かったかしら?
こんなに素敵なお顔を作れる方だったのかしら。
どうして私はこんなにもどきどきしているの。





「くっ、はは」

「………リーダー、からかうの、やめてください…」

心臓に悪いわ、と胸に手を当てる。
まだ鼓動が早い。

「今日は、一緒に眠ろう」

「は」

ソファから立ち上がったリーダーにぐいと手を引かれて、リーダーの体から落ちたブランケットに足を取られながらベッドへ促される。
一体リーダーはどうしたというの。
腰を抱かれて一緒にベッドへ横になった。
この状況は少し、恥ずかしすぎないですか。
足元へ畳まれていたふかふかの毛布を手繰り寄せて、ばさりと私たちへかぶせる。
このベッド、シングルなのよリーダー。
大きな貴方と私では、少し窮屈だわ。



「おやすみ、」

「リーダー…………おやすみ、なさい」


表情は穏やかなまま、リーダーはごく自然に目を閉じた。片方の腕は私の首に回って、もう片方は毛布越しに私の腰を掴んで離そうとはしない。
こんな状態で眠れるわけなんてない!
私はどうやってこの目の前の酔っぱらいの腕から逃れようか、それだけを考えていたら朝を迎えてしまった。




今日も私は任務があるのよ!
上司だとか恩人だとかは全て忘れて、朝頭を押さえながら起きてきたリーダーをとりあえず殴り倒してやった。










リゾットは酔ったら色んな女性を口説き回ったらいい。
なんて妄想です。でもこのお話は、本当にヒロインさんを愛しちゃってます(わからないよ)

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