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□交差二重恐怖
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ぼくから離れていかないで

…わかってる、
ただのわがままなのは…

ぼくにさわらないで

…だってぼくはこんなに汚い

離さず触らず、
ぼくは君に何を求めていたのだろう。





交差二重恐怖

Noli me tangere






「コンニチワー」
「…………帽子屋さん…」

にゅっ、と。
僕が紅茶を飲んでいるテーブルの下から彼が生えてきた。

おかしいな
見通しがいいから近付いたらわかるはずなのだけど。

「今日もご機嫌麗しく」
「それは君の頭のことじゃない…?」
「アハハーごもっともです」

いい天気ですからワタシの頭も快晴になりましたヨ、とおどけてみせる。
楽しい人だ。

「で…僕に何か…?」
「ワタシが快晴でもどこかは集中豪雨になり得ますカラ」
「…僕だと?」

おかしなことを言うんだねと言えば、彼は首を横へ振る。
確信的な否定の動作に、僕は思わず彼を凝視した。

刹那、白い手が、僕の髪をぐいと引っ張る。
引き寄せられ、僕は彼の胸へ倒れ込んだ。

それに驚き離れようとするが、しっかりと抱きしめられていて叶わない。

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