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□止まってしまえ
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針。刻。

それは僕の大事なものを奪い去る、悪の権化だった。





止まってしまえ

luce della vita non scompare






「どうしたんです」
「…………」

夜。
僕は自室にいた。

疲れていたのか、気分は夜闇に比例して暗くなって。
いつだったか彼が言った言葉を思い出し、怖くなった。

だのに、この世界はそれを彷彿させるものばかり。
見ずとも音が耳へ滑り込んでくる。

だから、壊した。
進まないように、するために。

「…ヴィンセント」
「………このままが…いい…」

この愛しい存在が居なくなってしまう現実を直視したくない。
壊れた時計の残骸の景色の中に、何故か現れたこの人を離したくない。

意思の光が消えてしまう日を、想像したくない…

「………どういう状況かわかって言ってるんですカ…?」

ワタシはあなたにいきなり抱きつかれて、残骸の床に座り込んでいるんですが。

そんな彼の言い分すら右から左。

「怖い」
「………?」
「あなたが居ないと怖い…」

僕は嫌われ者だ。
一生懸命笑っても気味悪がられる。
苦手だと、鬱陶しいと
周りの目はそれくらいしか語らない。

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