ネタ話
□サイコパス
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「ねぇ母さんねぇ母さん」
___私の母は潜在犯だった。
「ねぇ母さんねぇ母さん」
___けれども、母はとても優しく、とてもキレイな女[ヒト]だった。
「しー、いい子だから静かに。かくれんぼの“オニさん”に見つかっちゃうよ。」
幼い私はニッコリと微笑む母の言葉に素直に口を塞ぐ。
___私の母はとても重い罪を犯した重罪人でした。
「チッ!見失ったか…だが、まだここら辺にいるかもしれん。気を抜くなよ!」
母は血で濡れた半身を幼い私に触れないように抱え直して息を潜めた。
___それでも、私にとって母はとても優しくて暖かいヒカリでした。
カツリ、カツリ、
恐る恐る、辺りを警戒するように歩く足音が徐々に私達に近づいて来る。
___幼い私には分かりませんでした。
なぜ私の母が私を連れて家を飛び出したのか。
少しずつ、少しずつ近づいてくる足音。
母は祈るように目を瞑り、私をぎゅっと抱きしめて顔を合わせた。
___ただ一つ、ただ一つだけどうしても忘れられない…脳内に染み付いて離れないコトがあります。
「あぁ、私の愛しい子…いい?お母さんはちょっとだけ…ちょっとだけオニさんを遠くに引き連れるから、ここから動いちゃダメよ。それから、物音が全然しなくなったら、もし、お母さんが戻ってきてなくても、ここをまーっすぐ行った公園に行きなさい。そこでオジさんが待ってくれてるから、温かいモノでも買ってもらいなさい。すぐに追いつくから、いいね?」
幼い私は一つ、頷いて見せると、母はもう一度ぎゅっと抱きしめて私の頭を撫でた。
そして、勢いよく物陰から足音を鳴らす“オニさん”の方に向かって走っていった。
___それは、…
しばらくして、遠くで、けれども近い所から聞き慣れない独特な音が響いた。
___去り際の母のあの、心底楽しそうな嬉しそうなそして、ほんのり寂しそうな表情を……
ボンヤリと、気がつけば見慣れた白色を眺めていた。
(…あれ、ここは?)
そこで、ふと、私は仮眠するためにソファーで横になった事を思い出した。
「…なんだ、夢か。」
小さく零れた声は掠れていた。
私は僅かに顔を顰めて、両手で顔を覆った。
「おはよう、珍しくぐっすり寝ていたね。」
不意に後方から声をかけられた。
まだハッキリとしない思考回路ではこの声の主を思い出すのに少々時間がかかった。
「あー……、はようございます…槙島、さん。」
ソファーから体を起こして振り返ると、私のコレクションを詰め込んだ本棚に寄りかかり、本を読む槙島が居た。
彼は本を捲りながらも楽しそうに、面白そうに、嗤っていた。
「…槙島さんって、いつも楽しそうですよね。…それにしても、今日は一段と楽しそうな、様で…いや、嬉しいも入ってるのかな?」
私の発言に彼はピタリと手を止め、笑みを消した顔でこちらを見た。
急に笑みを消してこちらを見るのはいつものからかっている事なので、私は気にせずに背もたれに顎を置き、喉をさすって見つめ返した。
(…そういえば、昔は急に真顔で見られて戸惑ってたなぁ。槙島さんってば、その様子が気に入ってたのかな…。)
しばらくして、彼は戸惑うのを待つのを諦めたのか飽きたのか分からないが、再び笑みを浮かべて口を開いた。
「やっぱり分かるかい?」
「まぁ…長年一緒に居るんでね、分かりますよ。…どうせ新しいオモチャを、見つけたんでしょ?しかも、とびっきりのを…。」
そこまで言って、声を発する度にカラカラな喉が気になり、私はいつも傍に置いているベルに手を伸ばす。
__ちりんっ
はい、ここまで!
ちょいと書いてたら飽きてしまった現実…(´・ω・`)