◎闇と風◎

□LOVE Not LOVE
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ガラリ―…

本に落としていた視線を、無意識に物音がした方へ向ける。

教室に入ってきたのはシーナ。

ばっちり目があってしまって、思わず勢いよく逸らしてしまう。

「よっ!ルック、相変わらずはえーな(笑)」

そう言いながら、こちらに向かってくるシーナの姿にため息をひとつ漏らすと、僕は再び本へと視線を戻した。

だいたい、なんで違うクラスのあんたがこの教室に入ってくるわけ?

心のなかで悪態をつくと、すぐ後ろに気配を感じた。


「………っ!?」

ガバッ!

気づいたときには、すでに彼の腕の
中。
意外に逞しいシーナの腕力にかなうはずもなく、必死に抵抗しても離してくれそうにない。


「うわっ、あんま暴れんなって…!」

「…いいからさっさと離れなよね!
読書の邪魔なんだけど」

そう冷たく言い放つと、これでもかというぐらいの睨みを効かせてシーナを見てやる。



「シーナ…?」

もう少し文句でも言ってやろうと思ったが、彼の浮かべている表情に思わず息を呑んでしまった。

何かに苦悩しているような、切なそうなその表情に…。


「なぁ、ルック」

耳元で囁かれたシーナの低い声に少なからず動揺した自分がいた。
そんな自分を抑え込んで、とりあえず平然を保とうと彼の問いかけに応える。

「何、さっ…」

「……好きだ」

「…意味わかんないんだけど。とうとう頭いかれたわけ?」

「今日は、それだけ言いに来た…」

若干というかかなり話が噛み合ってないような気がしたが、絞り出すように告げられた彼の言葉の意味を理解するのに、そうたいして時間はかからなかった。

「あんた、人のことからかってさ。
そんなに切り裂かれ「お前がティルのこと好いてんの知ってんだよ」

……は?

「なに…言って」

「本気に決まってんだろ」

「誰にでも言うくせに…」

「ばーか、言わねーよ」

「…っていうか、バカにバカって言われたくないんだけど」


ガラリ―…

誰かが教室に入ってきたのに弾かれたようにシーナは扉の方に顔を向けた。

その瞬間、もともと目力のある彼の目付きがさらに鋭く突き刺すようなものに変わって、抱き締められる力が強くなった気がした。

そして、すぐに走る嫌な予感。

何か黒いものが近づいてくる。

その正体が何か分からないほど僕は疎くない。

「いででっ!!!」

次の瞬間、教室にシーナの声が響いた。

「シーナ、何で僕のルックにさわってるんだい?」

シーナの腕をひねりあげ、黒い笑みを浮かべているのは間違いなくティル。

「はぁ…別に君のものじゃないけどね」

おかげでシーナから脱出はできたわけだけど、助けてもらったというより、むしろ厄介者が増えたなんて思いたくもない。
っていうか、ティル。
…君も違うクラスだよね。
自分の教室も分からないなんて、余程の馬鹿に成り下がったわけ?


腕を捻られてかなり苦しそうなシーナ、それでも残った片手で僕のことを離そうとはしない。

「…っ…てか、離せよ!まぢいてぇ」

「まずは、ぼ・く・のルックから離れて欲しいんだけどなぁ。そしたら考えてあげるよ」

どこか楽しげなティルは、遠回しにシーナを挑発しているようだった。

まるで、反応を楽しむみたいに。

っていうか、ティルはやたら僕の所有権を主張してるけど…切実にそれだけはやめてほしい(苦笑)


「はぁ…」

僕は、互いに火花を散らしている二人に最大級のため息をプレゼントした。
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