図書

□青空が。
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世の中こんな物、とはよく言う言葉。
早く帰りたい人程
要領が悪くて帰れず、
ずっと残っておきたい人間程、
すんなり帰れる。

私は後者になる。

半期決済も終わり落ち着いてる時期
のはずなんだけれども。



賑わう通り。
周りの雑音を消したくて、
イヤホンをつける。
歌の歌詞もメロディーも
頭には入ってこない。

(大分…重症かなぁ。)

信号が青に変わるまで待つ間に
肩の鞄を背負い直す。

こんなに重かったっけ?
そう思うぐらい何かが乗っかってるように
重い。

足取りも。

家に帰るのが
いやだいやだと言っている証拠なのか。

あれから月日は結構立っているのに。




一人暮らしの小さい間取りの部屋が
やけに広く感じる。

手を洗いに洗面台へ行けば
捨てきれない歯ブラシと男性用の洗顔。
キッチンへ行けば二人分揃っている
食器類。
そこらじゅうにある、
アイツが置いて行った物。

見たくなくても目につく。
なのに捨てる勇気はない。
まだ。


心の葛藤で
また今日も終わる。












「カリン早くしろって。」

「ちょっとまだ、髪の毛が!」

「なんでも一緒だって。」

「え?!なんてー?!」

「はぁ……。」


出掛ける時は
決まって私が遅い。

というか女より支度の遅い男も
どうかと思うけど。


智久がオフの日、
休みが合えば、決まって車で遠出する。

行き場所も大概私の行きたい所に
連れていって貰ってる。


「…おっそ。」


エンジンをかけて待っていた智久の
第一声と顔、呆れ顔。


「智久の準備が早いんだって」


なんてやり取りも
久々に二人で出掛けるから出来る事。

運転をする時の横顔とか、
流れてる曲を口ずさむ時の顔とか
とにかく、好き過ぎて。
一人、横をチラっと見ては
にやけてしまう。


テレビの中の彼だからじゃなくて、
山下智久っていう人間が好きだった。






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