記念物・お題

□復活企画小説5
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この怒りをぶつけた自分に腹が立つ。

それを隠すために、またため息をついた。

いつからこんなに余裕がなくなってしまったのか。

自分でも分からない。

でも

嫌なのだ

誰かが彼に触れるのが。

でもそれを言えないのだ。

言ったら彼はそうするだろう。でも、それをさせてしまったら、きっと私は


「……馬鹿みたい」

ぼそっと呟き、買っていたお昼のパンを口にした。

「あれ、柴崎さん」

その声に振り返れば、笑顔を浮かべた小牧がいた。

「小牧教官」
「どうしたの?こんなところで。あれ、手塚のやつなら昼休みに出たよ?」
「そうなんですか、知りませんでした」

そう言っていつものように笑顔を浮かべれば、立ち上がった。

「じゃ、光と合流します。」
「…柴崎さん?」
「はい?」
「…何かあった?」
「何もないですよ?どうしてですか?」
「俺じゃ、話せない?」

そう言って小牧は立ち上がった柴崎の隣に腰かけた。

「お茶も丁度、2本あるんだよね。」
「そうなんですか?」
「うん、ホントは堂上に頼まれたんだけど笠原さんが買ってたみたいで」

嘘か本当か分からないこと言いながら、小牧は柴崎に無理を言われない雰囲気を醸し出しながら柴崎に渡した。

「どうぞ?」
「…ありがとうございます。」
「…それで、何があったの?」
「そんなに出てますか?私」
「うん、俺か手塚か、堂上にしか分からないとは思うけど…」
「……大したことではないんです。」
「手塚関係?」
「…自分でもわかってるんです。でも、我慢できなくて」
「……柴崎さん?」
「…今まで、こんなに好きになるってこと、無かったんです。男はいつも見た目か体でしたから。」

ぎゅっと思わず手を握り締めれば、小牧はそっと柴崎から視線を外した。

「……普通だと思うよ、そういう感情」
「……」
「俺も、毬江ちゃんが俺以外の男と話してるだけも嫌だし。」
「…堂上教官、でもですか?」
「勿論、あいつも男だよ?」
「……」
「ね、柴崎さん」

そっと視線を戻した小牧は柴崎に微笑みかけた。

「そういう柴崎さんもいいと思うよ?俺」

その言葉に

柴崎は目を見開いた。

「…こんな私が?」
「だってそれも柴崎さんじゃない?」
「…」
「素直で可愛いと思うよ、俺は」
「……そ、ですかね」
「そうだよ。今まで柴崎さんは甘えれなかった、ただそれだけだよ。」
「…」
「これを機にうんと甘えてみたらいいんじゃない?」
「……」
「じゃ、俺、行くね」

そういって小牧は柴崎の肩を叩くと立ち上がった。

「…小牧教官」
「ん?」
「……ありがとうございます。」
「どういたしまして」
「これ、堂上教官にじゃないですよね」
「…バレた?」
「分かりますよ、だって教官、笠原と外食ですよね、今日」
「知ってたんだ。」
「いつも惚気けられてますから」

そういって柴崎も立ち上がった。
そして笑みを浮かべる。
その笑みをみて小牧は安心したように微笑んだ。

「大丈夫そうだね」
「はい、ありがとうございました」
「頑張って」
「はい、たまには小牧教官も聞かせてくださいね?」

そういうなり柴崎は一礼し、走り出した。
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