記念物・お題

□復活企画小説8
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『可愛い』

それは何回も、何百回も色んな男から言われてきた。

でも

貴方に言われる『可愛い』は違った。


――――――

「よいしょっと」

いつものように部屋の片付けをしていた。

特に意味はない。

ただ、予定がないだけだ。

「…ふぅー、これでよし、と」

だからいつも以上に手間をかけて綺麗に片付けていた。

そんな時に限って電話が鳴る。

「もー、誰よ。」

携帯を手にして見ればそれはあいつからでちょっと嬉しくなった。

「…って、早くでないと」

慌てて通話ボタンを押せば何故か笑いをこらえている様子のあいつがでた。

「…何笑ってるのかしら?手塚君?」
『いや、悪い。』
「それで、何よ?電話なんて」
『今から暇か?』
「は?」
『出掛けないか?』
「何、いきなり」
『…』
「光?」
『疲れてるから休みなさいっていって麻子が来ないから』
「……寂しくなった?」
『……』

照れ隠しのように黙った手塚に柴崎は笑った。

『…麻子』
「分かったわよ、行くわ」
『……呆れたか?』
「なぁーに言ってるのよ。可愛いと思っただけよ」
『っおい!』
「じゃ、駅に一時間後ね」

電話を切ると思わずニヤけてしまう自分に叱咤をしながら用意をする。

―どんな格好にしようかしら

いつもだったら自分似合うものを着て、相手のこともちょっと配慮して選ぶ。

化粧も服装も

でも

あいつの時は、手塚の時は違うんだ。

可愛く見られたい

なんていつもは思わないことを思ってしまう。
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