捧げモノ

□Message
1ページ/1ページ



安椿






「……む―…これは………」


「?どうしたんですか、椿くん?」


「…いや、なんでもない」



ボクはあまり人に頼らない方だと思う
別に頼らないから良い悪いと言うわけではなく、僕の場合はきっと昔からの癖だとか、意地になるからで、かえって他人に迷惑をかけてしまう


でも自分の力で出来るならやった方がいいと思う、特にコレは。

数学なんて答えがある。
要は解き方が分かればどうにかなる




「…………」




難しい…
ここがこうなって解が出るとこまで分かるのだが……

じゃあここをこうして……いや違う…





「椿くん、そろそろ会議の時間だ」


「む!もうそんな時間か」



はぁ、結局解けなかった
しょうがない家でじっくり考えよう




「安形!ほらもうすぐ会議始まるから起きて」


「うっせーミチル」




「……会長」



相変わらず会長はだらだらしている
まぁてきぱき仕事をしていたらしていたらで驚くけど






「では今日の会議は、昨日決まらなかった予算についてですが…――…」





◆◇◆◇◆◇◆





「じゃあ椿くん、先に私たちは帰るな」


「ん……あぁ。また明日

あ、会長たちはまだ残るんですかか」


「ううん。もう帰るけど安形が……」



榛葉さんの視線の先には、手紙なのかわからないが何かを書いている会長がいた
おかしい。何も今日は書類はないのに

ジッとその様子を観察しているとと会長はこちらの視線に気づいた



「あ?なんだ椿、人の顔ジッと見つめて?」

「み、見つめてません!!
会長こそ何書いているんですか?」



すると会長は自分の手元の紙と僕を交互に見てニヤリと口角をあげた




「ん?まぁアレだアレ
人助けだ」


「人助け?どういうことですか」


「あ〜………まぁそんな大したことじゃねーから」


それよりミチル早く帰ろうぜ」



「なんだよ、俺はお前を待っててやったのに」


「つー訳でじゃあな椿」





「はぁ。本当に会長は適当なんだから……」













日が傾いて辺りはオレンジに溶けて耳をすますとカラスの声が聞こえそうだ



さて。皆が帰ったことだしボクもそろそろ帰ろうかな

鍵は……えーっと………あっ!さっき僕の鞄に入れたはずだが……うん。あったあった
あとは生徒会室を施錠して……


アレ?僕の数学のノートがない
確かに鞄の中に入れたが……



はぁ、面倒だが鞄の中身を全部出すしかないか



「…………」






ない!!
やっぱりノートがない!!

もしかして僕の机の中に………いや、ない。

あとはーーー………





「アレ?」



床に落ちていないかと生徒会室を見回すとポツンと机に置かれた1冊のノートを見つけた
色や様子からして間違いなく僕のだと思うのだが、そんなことより問題なのはそのノートが置かれている場所だ




「なんで会長の机に………」





近くまで行き、手に取ってみたがやはりそれは自分のものだ



「僕……なぜ会長の机に………」




ふと考えてみたがやっぱり思い出せなかった
まぁ別にノートが見つかったから構わないが

それにしてもずいぶん暗くなってきたな。早く家に帰らないと


急いでノートを片付けようとしたときヒラリと一枚の紙がノートから出てきた



「……コレは……」




紙にはよくわからないがたくさんの式が書いてある。しかし僕の字ではない
サラサラと流れるような字。少し薄い筆圧。





この字には見覚えがある、



「……A.(3,5)」

この問題ってさっきのわからなかった問題……

それに紙の端に何か書いて………





「っ!!!」









◆◇◆◇◆◇





「なんか安形機嫌いいね」



「まぁ人助けしたもんな」



「……?何言ってんの」



「ん?……ナ〜イショ」



「キモい」



「ひでーなオイ。

………まぁしかし、アイツももう少しくらい俺をなぁ……」



「??
どこかに頭でもぶつけた?意味不明」


「なんだとミチル!!!」















「なんかカッコいいな………」



そういえば僕も始めはこういう姿に憧れて生徒会に入ったんだっけ
やるときはやる、頼りになる。






もう辺りは暗い。さぁ帰ろう。


最後に紙の端を手でなぞった




「…もう十分すぎるくらいですよ」






『少しは俺に頼れよな、空気ヨメ男!』








message





.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ