小説
□年越し
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クリスマスツリーをしまいながら朱楽は何かを思考している。
俺は今日の夕飯のシチューを作っている。
リビングの10畳に聞こえるのはテレビの音とシチューになるものの沸騰する音だけである。
二人とも黙々と各自の作業に取りかかっている。
「ねぇ、」
朱楽が口をひらく。
「クリスマスって結局、何をしたいんだろうね」
涼しげな声。
ああ、俺とは全く似ていない
「ツリーとクリスマスとイルミネーションとサンタクロースってさ、確か全部意味が違うんだよね?わかんないけど」
「…サンタクロースはジュースメーカーが作ったって言われてるよな」
答えた。
結論を朱楽も俺も知らない、無意味な会話。
「んー…まぁ…ケーキ食べれるし…何でもいいや」
諦めたらしい。
朱楽は意外と淡白な性格をしている。
自分の利になれば経緯や動機はどうでもいい。
ああ、俺とは全く似ていない。
似ているのは容姿だけ。
それも、そっくりという程は似ていないけれど。
この容姿が、朱楽と俺の共通点。
「…まだシチューできないの?」
ツリーを片付けてこたつに入っていく朱楽。
テレビを眺めながら俺に声をかけて、寒そうに暖房のスイッチを入れる。
「…あと15分」
俺は適当に完成の目安を伝えて、サラダを作る。