その他

□素直じゃないひと
1ページ/1ページ

 
 
 
週末のある夜、仗助からメールが来た。

“露伴、明日暇??”

“?”の後に可愛らしいクマが腕を組んで頭を捻っている。それを見て、露伴は素直に嬉しいと思った。自分は仗助が好きだ。そりゃあ好きな人からメールが来たら嬉しいに決まっている。ましてやそれが、もしかしたらデートのお誘いかもしれないメールだとしたら尚更だ。

さっそく返信しようと露伴はキーを打つ。もちろん親しい人も少なく、仕事も早い自分に用事などない。つまりは暇だ。しかしそのまま返すのは露伴のプライドが許さなかった。

“暇じゃあないが時間を作れないこともない”

そう送って携帯を置いた直後、再び携帯が鳴った。仗助からだ。

“あー忙しいなら無理しなくていいッスよ!また今度にします”

思わず露伴の口から「は?」と言葉が漏れた。メールの内容は仗助が露伴のことを思ってのものだ。しかし明日仗助に会う気だった露伴としては不本意極まりない。こんな時は仗助の優しさや気遣いを恨めしいと思った。それと同時に、ひねくれたことしか言えない自分に腹が立つ。

“仗助、お前から欲しかったメールはこんなメールじゃない。僕も明日お前に会いたい。”

しかしそう素直に送
れるはずもなく、露伴は何も返信できないまま、携帯を握りしめ半ばいじけるようにして眠った。



ふと、いつもより早い時間に目が覚めた。まだ薄暗い部屋の中で時間をみようと携帯をみると、受信を告げるランプが点滅している。慌てて携帯を開くと、仗助からだった。

“やっぱり少しでもいいから会いたい”

ストレートな文章がいかにも仗助らしい。そして自分にはないその正直さを露伴は眩しいと思った。

“朝8時に僕ん家に来い”

そう送ってから、数時間後に来る愛しい恋人の顔を思い浮かべ、露伴は身仕度を始めた。




fin.
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ