小説

□ボクラノセカイ
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ぽつり、と頬が濡れた感じがした。



ふと空を見上げると、暗雲がたちこめている。どうやら原因はコレらしい。

僕はため息を一つついて周りに目を向ける。
人々は誰も他の人の生活に干渉しようとはしないし、そんなことを微塵も思いもしない。
彼らには役割が存在しない故に、好きに生きていけるのだ。


羨ましいと感じたことはないが、それでも時々こうやって彼らを見ては自由なんだなぁと思う。
それが羨ましさなのだと言われてしまえば、もう僕は何も言えないのだけれど。

それでも彼女が笑っていたから、この世界が好きだと言って楽しそうに笑っていたから、僕は僕としてこの世界で生きるのだ。


真っ白な世界を彩っていったのは彼女で。

この世界を作り出したのも、僕を生み出したのも、すべて彼女で。


僕は"ただの僕"として、世界の始まりの、物語の主人公である彼女を迎えに行くはずだった。



僕はこんな意志など持たないはずだったのだ。




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