小説

□ボクラノセカイ
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……それなのに。


ぽつり、ぽつりと、黒い雨がこの世界を浸食していく。
足元から指先まで、地面から空まで、すべてが黒に染まっていく。

あぁ、どうして。こんなことになってしまったのだろう。


世界は僕が彼女を迎えに行く前に途切れてしまって、
いつのまにかこの世界の彼女が彼女ではなくなって、
そうして雨が何度も降って、世界がどんどん失われていく。


ビリ、と嫌な音が聞こえた。
慌てて視線を上げると真っ黒になってしまった世界が引き裂かれている。

彼女が作ったこの世界が、彼女のための世界が、
彼女ではない誰かの手によって、破り捨てられた。

まだ、間に合うのだろうか。世界は少ししか失われていないはず。
けれど僕はここから動けない。
僕の意志は確かにここにあるけれど、僕は"ただの僕"でしかない。
僕が動くためには、彼女が必要なのに。
だって僕は、彼女を迎えに行くために、彼女の手によって生み出されたのに。


雨が酷くなる。
そろそろこの僕も消えてしまいそうだった。

先程見た人々もみんな黒に染まって、周りの景色も黒一色で、気付けば僕の手も真っ黒だった。


もうすぐ僕はいなくなる。
この世界の、このページから、僕が消える。

どうか、すべての僕が消える前に。
彼女の代わりにこの世界を、彼女が紡ぎたかった物語を、誰か、






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