聖凛学園〜片思い物語〜
□○ 始業式の日に...
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・・・やっと始業式が終わったのに。
帰れると思ったのに・・・。
どうせ、帰るって言っても寮なんだけど・・・。
1年のときから同室の大和に断って俺は放送準備室に向かった。
少しおくれたかな。と思ってちょっと廊下を走ってると
「廊下を走って転ぶなよー」って佐河先生に言われたけど、適当に返事してまた走る。
「遅れました!?」
なんて、ちょっと疑問系交じりでドアを開けると先輩や同年がこっちを見てくる。
良くあるけど、この視線には慣れることなんてない気がする。
「おぉー山瀬。遅かったなぁ、話自体は短かったからもう終わったで?
変わりに、お前にはちょっと俺の仕事手伝ってもらうさかい、挨拶したあとにお前だけ残って行きーや」
「え・・・」
あぁ。俺たぶん今、顔がひきつってるだろうな・・・
そんなことを考えながら適当に挨拶を済ます。
がーんばれよっ!なんて、口々に言っていく同年の帰る姿を見ながら俺はため息をこぼした。
「まぁまぁ。そんなため息ついとらんと、早いとこ終わらせたほうがお前も嬉しいやろ?」
「はいはい...で。仕事ってなんですか?」
栄先生に仕事内容を聞きながらどっさりと目の前に資料がおかれる。
どうやら委員長が企画した昼休みのテレビ放送が通ったらしく
近々それを進めていくのでそのための資料を委員全員分、今から作っていく仕事らしい...。
遅れたのは俺が悪いけど、こういうのって普通
委員長も残るもんだろ・・・。
そんな愚痴をこぼしながらも作業に熱中していく。なんせ、量が量だから半分片付けた所で時計を見るともうすぐ12時半になるところだった。
始業式が午前中で終わって、ココに来たのが11時過ぎだから・・・
「1時間とちょっとか・・・」
そうやって考えていくと、頑張っても寮に変えれるのは2時近くになるだろう。
今日に限って寝坊したから朝ご飯だってろくに食べていない。
「今日の占いは12位だろうな」
そんなネガティブなことをこぼしながら携帯を開いてみるとメールが来ていた。
それでも、どっかのサイトからのメールでまたテンションが落ちていく。
「ってか、栄先生も手伝ってくだ――」
今まで集中してきたのは、栄先生が静かだったのもあるけど。
「まさか、部屋にいないとは・・・」
あの人のことだから、職員室でなんか食ってるんだろうなーとか思いながらまた資料に目を通す。
あぁ。この束が俺の心の重さを表わしてるような気がしてくる。
パチンッ
ホッチキスの乾いた音が妙に響く。
再び作業のほうに熱中しだしてくると作業している手の横でブーブーと音が聞こえて振動が伝わる。
熱中してたのもあって軽く肩がはねた。
息抜きがてら、メールフォルダを開くと大和からいつ頃帰るかとメールが来ていた。
もうそんな時間かと時計に目をやるともうすぐ1時を指しそうになっていた。
『もう少しかかる。』と、短調的に返信を書いて送信ボタンを押そうとすると
「――なーにサボっとるん?早よぉ、作業せんと夕方になってまうで?」
「っっ・・!?」
いきなり耳元から声がした。
無意識に体が動いて声のするほうを向くと、すぐ近くに栄先生の顔があって少し身を引く。
「なんや?彼女おるんか?意外とすみにおけへんなぁ〜」
「なっ・・・ちがいますよっ!寮で同室の奴に返信してただけです!大体、仕事サボっていなくなったのは・・・」
ふいに、近くからすこし食欲をわかせるにおいがした。
「そんな、怒らんと。ホイ、弁当っ♪」
「うっ・・・」
ありがとうございます。と一言ごもった声で言うと
先生は笑って俺の隣に座った。そして、資料を並べながら昼食を食べる俺の横で作業を手伝ってくれた。
っていうか、本来手伝っている立場なのは俺なワケで先生がいなかったことが根本的におかしいんだけど...。
まぁ、手伝ってくれたんだから良しとしよう。
夕暮れも差し掛かってきた頃に作業を終えて寮へ帰る。
疲れていたはずなのに、ちょっとスッキリとした気分だった。