本棚2-創作

□12か月物語-3月
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ひな祭りの夜、トイレに起きたひなちゃんは小さな音に気がつきました。
居間から小さい音で祭り囃子と人の声が聞こえます。
そ〜っとふすまを開けてみると、五人囃子の演奏で雛人形達が宴会をしていました。
楽しそう、眺めているとお雛様がひなちゃんに気がつきました。
「お内裏様、もう一人の主役が着きましたよ」
「おぉ、ひなじゃないか、入れ入れ」
お内裏様に手招きされて居間に入ると、いつのまにか小さくなって雛壇の上に居ました。
「よく来たな、ひな」
「楽しんでいってね」
ひなあられを食べたり、甘酒を飲んだり、歌って、踊って。
お内裏様は笛が上手で、お雛様の歌声は綺麗でした。
ひなちゃんが踊ると、笑いが起きました。
十二体と一人の宴会は朝まで続きました。


「お内裏様、そろそろ時間のようです」
うっすら明るくなった外を見てお雛様が言いました。
「そうか、ひな、また来年会おう」
朝日が射し込むと、ひなちゃんは居間に立っていました。
雛人形は何事もなかったように元通りです。
「たのしかった、ありがとう」
ひなちゃんは部屋に戻って布団に潜り込みました。


その日、ひなちゃんはお母さんと一緒に雛人形をしまいました。
「また、らいねんね」
ひなちゃんが言うと雛人形達が笑った気がしました。
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