中・長編
□記憶 第二話
1ページ/5ページ
子供の姿というのは何かと不便だ。
もともと万事屋は小さな子供が生活することを想定して家具などを配置しているわけではない。
何時も座っている社長椅子は大きすぎてすわり心地が悪い。
洗面所は位置が高くて踏み台が無いとうまく手が洗えないし、鏡も当然見えない。
普段大好物の甘味を隠してある戸棚も手が届かない。
銀時にイライラが募る。
―あぁクソッ!これじゃなにもできねェじゃねーか!
何より鬱陶しいのは―…
「あのー神楽ちゃん?そんなに見張らなくても銀さん何処にも逃げないからね?」
新八が子供服を取りに戻っている間も銀時の傍を片時も離れない神楽に声をかけた。
「何言ってるアルか!子供を一人で放っておけないアル!」
「どんだけ過保護なんだよ。」
本日二度目の深いため息を吐いた。
すると本日二度目の浮遊感。
「うわっ!?」
神楽が銀時を持ち上げた。
「子育てはスキンシップが大切ってテレビで言ってたネ!」
にこにこ笑う母親気取りの神楽にギュッと抱きしめられる瞬間、
銀時の全身を嫌悪感が駆け巡った。