novela
□あの日
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夕日が射す放課後の教室。
光の反射する窓際に士郎は座っていた。
見つめているのは茜色の空だった。
「士郎...?」
名前を呼ばれ振り返る。
そこには弟、アツヤが不思議そうな目で士郎を見つめていた。
「どうしたの?」
「いや、士郎こそ...外を見つめてよぉ...」
士郎は苦笑し「なんでもないよ」と言って席を立つ。
それを見つめているアツヤの目には様々な感情が入り混じっていた。
悲しみ、恐怖、絶望感
そして後悔。
「駄目だ...」
アツヤは小さくそう呟き、溢れそうな涙グッと堪えた。
ここで泣いてはいけない。
そう思ったからだ。
「すまねぇ...先に行っててくれるか?」
いつもと変わらぬ声で士郎に言う。
__大丈夫だ....
自分に言い聞かせるように何度も心の中で言う。
士郎はアツヤの調子が悪いと悟り、「わかった」と言い、外へ出た。
自然と流れ出す涙は頬を伝い、落ちていく。
様々な感情が込められた涙はポロポロと簡単に目から零れ落ち、
アツヤは流れる涙を止めることが出来なかった。
これで良いのだ。
これで....。
今まで何度も言ってきた言葉だ。
__兄貴は何も知らなくて良い。
それでも納得いかない自分に嫌悪感を抱く。
我が儘だということを一番理解しているのはアツヤ自身だった。
士郎が狂った原因はアツヤなのだから。
机に顔を埋め、言葉を紡ぐ。
__俺は一生逃れられない。
__罪悪感という渦の中から。