book middle-T
□独眼竜とお転婆姫
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其の五
独眼竜が刃を収め、伊達軍は本当に撤収していった
やけに呆気なく去っていった伊達軍を、家臣たちも訝しんでいるようだった
しかし、我が地に平穏が訪れたのだ
そのことを喜ばずにはいられない
――いずれ、アンタを俺のモンにする
あの時、不敵に笑って言った独眼竜が頭から離れない
日々の稽古すら、身に入らぬ
どうしたものかと考えていたら、再び家臣が血相を変えて飛んできた
既視感――
「恐れながら申し上げますッ! も、門前に奥州の……」
『独眼竜かっ!? 兵の数は!?』
再び戦慄が迸る
しかし、それは長くは続かなかった
「そ、それが、見たところ伊達政宗一人のようで……」
『大将が一人だと? 供の一人もおらんのか』
「は、それも丸腰のようでして……」
供を連れずに、大将が丸腰?
『承知した、私が参ろう』
独眼竜の真意を量りきれぬのだから、仕方あるまい
私の答えに家臣たちは騒ぎ立ててくれた
それでも、私の心は変わらなかった
竜の訪問
((私が、逃げてはならぬ))