book short-T
□気づいてお願い気づかないで
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『……』
見てる此方が狂いそうなくらい綺麗な三日月の下、私は口から煙を吐き出す
別に見つけて欲しくて煙草を吹かすのではない
しかしアイツが私に気がついてくれたことは、やはりどうしようもなく嬉しくて
「どうした名前、えらくボーっとしてるじゃねぇか」
『ん、あぁ、トシ。 別に何でもない、大丈夫』
「疲れてんのか? 酷ぇ顔になってんぞ」
『え、そんな酷い顔してる?』
「あぁ、何か悩んでんのか?」
あぁ、ほら、トシは昔からそうやって優しいから
でもごめん、その心配そうな顔でさえ、今の私には痛いんだ
『……好きな人居たんだけどね、ちょっと無理っぽいんだ』
「相手に女でも居たのか?」
『んー、まぁそんな感じ?』
「そうか……、でも名前ならすぐにいい奴見つかるだろ」
嗚呼、どこまでも優しくて、
『ん、ありがと、トシ』
「なんたってお前は、俺や総悟と親友やってられるぐらいお人好しだからな」
それでいて、何より残酷な言葉
『あはは、何それ酷いー』
言葉とは裏腹に、心はどんどん荒んでいく
ねぇ、私今ちゃんとトシに笑えてる?
私の本当の気持ちに、気づいてなんかないよね?
お願いだから、トシ、お願いだから、
気づいてお願い気づかないで
((大好き、だから、親友で居させてください))