book short-T


□ナイフとお遊戯と逃避行
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「やっほーシズちゃん」

「なーんでお前が池袋にいるのかなぁ? 臨也くんよぉ……」


今日も池袋に標識とナイフと自動販売機が舞う

情報屋さんと喧嘩人形さんの喧嘩によって

傍観者に徹するのも楽しそうですが、巻き込まれてとばっちりを食らうのも色々と面倒くさそう


『逃げるが勝ち、と……』


痛いのも血を見るのも今はごめんです

そう思い、くるりと方向転換

その瞬間、ビュンと何かが私の顔の横を飛んでいった

何ごとかと、横切ったものを確認すれば、それは紛れもなく自動販売機と呼ばれるもので


「やっほー名前ちゃん」


突然隣に現れた声に目を移すと、そこには黒を纏った情報屋さん

ということは、背後に凶器を構えたバーテン姿の喧嘩人形さんが居るのは必然で……


『ちょ、情報屋さん! 私は巻き込まれたくありません!』

「別に名前ちゃんを巻き込もうとしたわけじゃないよ。 偶然偶然」


悪魔の様な笑みを貼り付けた情報屋さんは、いけしゃあしゃあと言い放つ

どうして私まで一緒に逃げてるんでしょう……


「待ちやがれノミ蟲ぃぃぃっ!!」


どうやら喧嘩人形さんには私が認識されていないご様子


『どーしてくれるんですか、情報屋さん!』


私の今日の予定が目茶苦茶ですっ!

泣きそうになりながら訴えるも、情報屋さんはニコニコしているだけで

あろうことか、私をひょいと抱き上げた


『な、何するんですか!』

「いいじゃん、このまま愛の逃避行と洒落込もうよ」


そんな気障な台詞を吐いた情報屋さんを、不覚にも格好いいなんて思ってしまった

もう私に勝ち目はない


『……私、怪我はしたくありません』


ですから、貴方が守ってくださるならお付き合いします

顔に集まる熱を自覚しながら、私は言葉を紡ぐ


「りょーかい」


情報屋さんの綺麗な赤い瞳は、まるで子どものように嬉しそうに煌めいた


イフとお遊戯と逃避行

((行き着くところまで、お付き合いしましょうか))
 


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