book short-T


□少女と罪と狼と
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逃げる逃げる、闇夜に舞う

追われる追われる、必死に逃げる


『いやぁぁぁっ! こーなーいーでーっ!』


流れるように綺麗な銀糸を靡かせて、少女は走る

その髪は月光に照らされ、なおその美しさを発揮する


「ふはははは、諦めろ名前! この俺から逃げられると思うな!」

「ちょ、因幡さんそれ完全に悪役の台詞!」


そんな少女を追うのは、赤毛の狼

背中には茶色い羽が生えている

赤毛の狼の傍らには、黒髪の少年――圭の姿も


『やだぁぁぁっ! 洋の馬鹿ぁぁぁ!』


そんな少女の叫びも空しく、少女は狼に捕獲されてしまう


「――ったく、手間かけさせやがって」

『はーなーしーてー!』

「……うん、もうそれ完璧に悪役だよ因幡さん」


ごめんね、名前ちゃん

少年の謝罪に、少女は恨みがましく彼を睨んだ


「ふふふ、名前、お前のその銀髪は俺がじっっっくりと堪能してやるからな……!」


狼の瞳がギラリと光る

その瞬間、少女の顔から色が消えた


『いやだぁぁぁぁぁぁっ!!』


少女の悲鳴が月夜にこだまする

少年は静かに、少女に向けて合掌した……


しかし、少年は知っている

少女が、本当は狼を嫌っていないということを――


女と罪と狼と

((この銀髪は、私の罪じゃないっ!))
 


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