book short-T


□恋立方程式
1ページ/1ページ



最近のキュー先輩は大門カイトとかいう人間に夢中だ

何でも、とんでもない天才で、アインシュタインの称号を持ってるらしい

パズルが得意で、頭の中は常にパズルのことばかりなんだとか

苦手なものはネギと、幼なじみである井藤ノノハが作る通称ノノハスイーツ

見た目はぼけっとしてて馬鹿っぽいのに、キュー先輩は彼に夢中だ

私に数式の話をしてくれることも少なくなった


「今日もカイトはね……!」


そう言って嬉々として語るキュー先輩の顔は、物凄く活き活きとして素敵だけど……

面白くない

キュー先輩が研究対象として、大門カイトに夢中だったとしても


私はキュー先輩の数式の話が好きなのに

数式の話を、目をキラキラさせながら話すキュー先輩が好きなのに


「どうしたの、名前? 元気がないみたいだね?」

『ふぇ!?』

「何をそんなに驚いてるの? ボクだよ」

『キュー先輩……』


心配そうに私の顔を覗き込むキュー先輩に対して、嗚呼今日も可愛い顔してるなとかなんとか思ってみたり

……場違いにも程がある

自分でそう突っ込んでみたものの、何となく空しくて、悲しくて

涙がこぼれそうになって、キュー先輩の顔はますます怪訝そうになるばかり


「名前? 大丈夫かい?」

『……あんまり大丈夫じゃないかもです』


思わず出た弱音に、キュー先輩を目を丸くした

……あたしのキャラじゃないもんなぁ

涙目になりながら馬鹿なことを考えてたら、額に暖かさを感じた


『ほぇ……?』

「……ちょっとは、元気出た?」


少し照れくさそうに、それでいて悪戯っぽい笑みを浮かべながら、キュー先輩は問う

よくよく考えてみれば、額に感じたのはキュー先輩の唇で……


『――っっっ!?』


状況を把握したと同時に、顔に熱が集まってくる

キュー先輩はそんな私を面白そうに見ていた


立方程式

((その答えに期待してもいいですか?))
 


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ