book short-T
□幸せを描いて
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『こんにちは、アナ君』
そう言って美術室の扉を開けると、真剣な顔でキャンパスに向かい合うアナ君がいた
今日は、綺麗な髪を結い上げてポニーテールにしている
その真剣な横顔は、うっとりする程美しくて
彼が描くその世界の美しさにも納得がいく
『さて、私も仕上げなきゃね』
そう言ってイーゼルを引っ張り出したところで、アナ君が私に気づいた
「名前〜」
ふわりと笑うアナ君は、キャンパスに向かっている時とは一変、とても可愛らしくて
とてもじゃないけど、男の子だとは思えない
『調子はどう? 完成しそう?』
「うん〜、あともう少し」
『そっかぁ』
アナ君につられて私の顔も綻ぶ
ふわふわと、春の陽だまりみたいな空間
「完成したら、名前に見て欲しいんだな〜」
『……いいの?』
「うん!」
『わぁ、楽しみ!』
彼の描いた世界を1番に見られるという事実
それから、アナ君が私に見て欲しいと言ってくれたこと
その両方が、私にとってこれ以上ないくらいの幸福で
自然と零れた笑顔に、アナ君も微笑み返してくれた――
幸せを描いて
((温かい気持ちが、君と私を包むから))