音也2

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8.



昔も今も、なんにも道具がなくったって遊ぶことは出来る。
施設にもおもちゃがなかったわけじゃないけど、そんなに数がいっぱいあるわけじゃない。むしろみんなで考えたごっこ遊びとかかくれんぼとか、体を動かしてわいわい遊んでる方が楽しかったりしたし。
鬼ごっこ、色オニ、かくれんぼ、氷オニ。かごめかごめにだるまさんがころんだ、ドロケイ、手つなぎオニ。
日替わりの遊びで走り回って、くたくたになって日が暮れる。勝ったか負けたか勝負がどうなったか、なんべんも遊んでるうちによくわかんなくなっちゃうんだよね。

そういえば、こんな遊びもあった。嘘つきオニ。
じゃんけんで最初にオニを決めて、その子はまず目をふさぐ。その間に他の子たちが、誰が嘘をつくかを相談しあう。
オニが目を開けたら、一人一人自分のことを紹介していく。言う事はなんでもいい。たった一人を除いて、それが本当のことでありさえすれば。

「わたしは黄色が好きです」
「ぼくは昨日チョコレートを食べました」
「わたしは学校にまりちゃんという友達がいます」
「ぼくはニンジンが嫌いです」

オニの子はみんなの言うことをじっと聞いて、顔を見て、誰が嘘つきなのかを考える。
「嘘つきみーっけ!」って言いながら一人を指差して、その子が嘘つきだったらお見事正解、次はその子がオニになる。そんな簡単な遊び。


でもさ、ちょっと思ったんだけど。
その子が本当のことを言ってるのか、嘘をついてるのか、実はその子自身しか知らないんだよね。
「今の言葉はほんとだよ」って言えば、それは本当のこと。
「今の言葉はうそだよ」って言えば、それは嘘のこと。
でも本当に本当のところは、どうなんだろう?ニコニコ笑いながら「ほんとだよ」って言ってる子は、確かに本当のことを言ってるんだろうか?

どこまでが本当?どこまでが嘘?
それは分からない。考えても考えても、真実の答えは出てこない。



もしかして、その子にも分からないなんてことがあったとしたら?
そしたら、俺たちは一体どうしたらいいんだろう?





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