音也2
□11
1ページ/6ページ
11.
あやとりって、結構難しい。
雨に閉じ込められた日とか、施設の子たちとやってみたことは何度もある。いつでもどこでも、道具も何も要らないお手軽な遊びだったから。
一人で作るのは、割と簡単に何でもできちゃう。はしご、東京タワー、ほうき、天の川。ぱぱぱっと競争しながら指を動かすのは得意技。
でも相手の作ったあやとりをうまいこと取るやつ、あるじゃない?あれが、何か苦手だった。
「うーん…ここと、ここでしょ、それで…あっ」
「なんや音也、また失敗やな」
「おっとやー、しっぱいー!」
「さんかいめー!」
「うーん…」
ひとつひとつのぴんと張り詰めた糸は、まっすぐに伸びて何処にも引っかかったりしていない。
でもそれを指で取ろうとすると、思いもかけないところが引っかかり、こんがらがる。
一箇所がこんがらがると、もう他のところもぐちゃぐちゃしてしまって収拾がつかない。
どこもこんがらがってなかった糸が、よじれて、絡まり、ぐちゃぐちゃになる。
一度ひっかかってしまったら、その糸はもう綺麗な形を描いてはくれない。はい、俺の負け。
そうして君は、また新しい言葉の糸を張り巡らせる。綺麗な、でも俺が取れそうにないくらい複雑な形に。
俺がまた取り損ねて、ぐちゃぐちゃにするのを待ち構えるみたいに。
*