音也

□12
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12.

「らっぱ」
「ぱんだ」
「だんご」
「ごま」
「ま…まんぼう」
「うさぎ」
「ぎ?ぎ…ぎ…うーん」
「音也、こうさん?」
「えーちょっと待ってよ。ぎ、ぎ、ぎ…」


重いカーテンみたいにどしゃどしゃ雨が降る。さすがに外には出られないから、みんな施設の部屋で思い思いに遊んでいた。
そんな日は本を読んだり、宿題をしたり、トランプしたり。俺はギターいじって歌ってることが多いかも。
うんとちっちゃい子も中にはいるから、そういう子とは手遊びとかをしたりする。今日はしりとり。
膝に一番ちっちゃい子を乗せて、何人かと輪になってしりとりをする。みんなが分かる言葉じゃないといけないから、これでなかなか難しいんだよね。


「はーい、じかんぎれ!音也のまけー!」
「えーなにそれ、時間制限なんて決めてなかったじゃんー」
「だーめ、んっとね、ばつゲーム!」
「ばつゲーム!」
「音也はみんなのうまになることー!」
「えええー?」
「わーいぼくから!」
「音也、はやくはやくー!」
「しょうがないなあ…」


よつんばいになって馬になり、ちびたちを背中に乗せながらふっと思い出す。トキヤはすっごくしりとり強かったな。
言葉をいっぱい知ってるから、あっという間にぽんぽん違う言葉が飛び出してくる。
どうしてそんなにぱっと出てくるの?って一度聞いたら、「音也が考えてる間に考えてますから。自分が言った言葉から次の次くらいまでは予想できるでしょう」って言われたっけ。
普通、そんなんできないと思うんだけど。


「音也、もっとはやくはしってー!それいけー!」
「あははは、危ないって!」


トキヤはもう、しりとりなんてもうしないだろうな。
今度会えたら、「しりとりしよう」って言ってみようかな?
呆れる顔が目に浮かんで、ちびたちを乗せたままちょっとおかしくなって笑った。




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