音也

□14
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14.


ちっちゃいころって、何して遊んでたっけ?
幼稚園が終わるとすぐにトキヤのあったかい手を握りしめて、外に飛び出してたよね。
毎日何をしてたかの記憶はぼんやりしてたりはっきりしてたり、ふと浮かんできたり、ずっと沈んだまんまだったり。


「ときや、きょうはおにごっこ!おにごっこしよう!」
「きのうもやったじゃありませんか。ほかのあそびにしませんか」
「ええー?あっわかった、ときやきのう、おとにつかまってばっかりだったもんね。えへへ、それがいやなんでしょー」
「…そんなことはないです」
「ほーんとー?」
「ほんとうです。いいですよ、おにごっこにしましょう」
「よーし!じゃあおと、さいしょにおにになってあげるから!」
「…そんなの、いいです。ぼくからおにになります」
「えー?だいじょうぶー?」
「だいじょうぶです!」


トキヤが顔を赤くしておもちみたいにぷぅっとふくれたのは、いつごろの話だっけ?
トキヤの怒った顔と、その顔に当たる陽射し、その時の土の匂いまで覚えてる。でもそれがいつのことだったのかははっきりしない。
鬼ごっこのほかにもいろいろやったよね。かくれんぼ、いろおに、てつなぎおに。公園にいる他の子も一緒に、あたりがオレンジ色に染まるまで遊びまわってた。

ああ、でも、あれはあんまりやったことがないかも。かごめかごめ。
だってあれ怖くない?なんとなく。
真ん中で丸くなってるとき、周りでほんとは何が起きてるか全然わかんない。だからなんか苦手だった。
目を閉じて、その間にトキヤがいなくなっちゃったら?トキヤじゃない人になってたら?そんな不安でいっぱいになる。

だから俺は、見えるところでトキヤのことをめいっぱい追いかけられる鬼ごっこが好きだった。
走り続けていれば、絶対捕まえられるって思ってたから。

いつでも捕まえられる。そう思ってた。





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