短編小説
□ヒロイン奪取作戦
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カタカタカタカタ…
誰も居ない万事屋にはそ〜っと玄関の扉を開く音だけが響いた。
「ただいまアル〜。誰もいないアルか〜?」
堂々と入ったって何ら問題ない万事屋の住人は、注意深く辺りを見回しながら真っ白な愛犬とともに部屋に入って行った。
「ヨシ!ミッションスタートネ!」
そう言って大きな犬−勿論定春である−とアイコンタクトを交わす。
そしてお目当ての和室に侵入すると、押し入れを開け片っ端から漁りはじめた。
なぜこんなことをしているのか…
物語は1日ほど前に遡る。
***
「えっ?銀ちゃんが!?」
「シー!声大きいよ神楽ちゃん!」
昨日もまた遅くまで飲み歩き、未だに起きる気配のない和室を見ながら新八は言った。
事の発端は銀ちゃんの女性問題だった。
「んじゃ、銀ちゃんはその女と…」
「うん。でも僕はちょっと安心したよ。30前にもなって彼女の一人も居ないのは心配だからね。」
「現場は抑えたのかい?ぱっつぁん。」
「現場って…。まぁ、後ろ姿だけしか分からないけど、女の人と二人で歩いてたよ」
「クロだな…」
「クロって、銀さんが誰かと付き合うのは自由だ…「違うネ!」
「銀ちゃんには私がいるネ!」
「へ…?
えェェェェ!!!?
か…かかぐらちゃんと、ぎぎぎ銀さんって…そそそその、つつつつきあってたのォォォォ!?」
「いんや、付き合ってないアル。冗談はやめるヨロシ」
「へ?んじゃあさっきのはどうゆう意味?」
「だって私はこの世界のヒロインアル。ヒロインはヒーローとハッピーエンドになるって昔から相場は決まってるネ!」
「んじゃ、神楽ちゃんは銀さんのお嫁さんになりたいってこと?」
「あんなマダオ本来ならごめんこうむるネ!
でもヒロインは譲りたくないアル。
ああ見えて銀ちゃんは主人公だし、タイトルにも銀!看板にも銀!名前も銀!髪の毛も銀!ギンギンギンギン銀ばっかりネ!
私の予測ではヒーロー交代は絶対に無いとみてるアル…。
そうなってくると、いまはサブキャラでも最終的に銀ちゃんとハッピーエンドになった人が真のヒロインネ!
これまで私は万事屋のヒロインとして頑張ってきたつもりアル。最後の最後でヒロインを譲るのは絶対イヤヨ。」
***
こんなわけで、私はヒロインを狙っている奴を洗い出すため、銀ちゃんの部屋から何か手掛かりになるものを探しているのだ。
…え?
尾行すればいいだろって?
それはダメアル。
銀ちゃんを尾行するといっつもバレちゃうネ。
銀ちゃんは無駄に勘がいいアル。
大丈夫!こちらには定春がいるネ!
銀ちゃんと違う匂いを発見したらすぐに言うアル!
私だって長年銀ちゃんのそばにいるんだから、銀ちゃんの匂いはすぐ分かるヨ。
その匂いを手掛かりにホシを捕まえるネ!
定春!銀ちゃん帰って来るまでがリミットヨ!
***
「なにこれ…」
銀時が家に帰ると、和室の中には押し入れの荷物が散乱している。
そしてその中心には、自分の着流しにくるまってスヤスヤと眠る少女と犬。
「マジで何やってんのコイツ…」
ボリボリと頭を掻く。
「銀さん、どうかしましたか?
…あれっ?神楽ちゃんに…定春!?
本当にやったのォ?」
「本当に?オイぱっつぁん、それはどうゆうことだ?」
一瞬しまった!とゆう顔をした新八だったが、すぐに諦めて話し始めた。
「実は…」
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