短編小説

□父親の憂鬱
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数日後、コンビに袋をぶら下げて歩いていた銀時は、万事屋の手前にさしかかると足が止まった。
見覚えのある黒い車が止まっていたのだ。

「!」

急に助手席の扉が開いたので、慌てて電柱の影に身を隠した。
助手席からは見覚えのあるオレンジ頭が出てきた。

「じゃぁナ!トッシー!ありがとアル!」

バタンと扉を閉める音。
するとすぐさま運転席の扉が開いた。
「ちょっとまて」
予想通り、出てきたのは黒髪の副長さん。

神楽に紙切れのようなものを手渡しすると、周りを気にしてそっと神楽の顔に自分の顔を近づけた。


「!」



一瞬ハンマーで頭を殴られたような衝撃が走ったが、なにやら耳打ちをしているだけのようで、少しは救われた。

「なんだよ、紛らわしいことすんなよ…ビビっちまったじゃねぇか…」


教会で式を挙げる娘を持つ全国のお父さんを尊敬した。
オレなら自分の娘が目の前で他のヤローとチュウするなんざ、正気じゃいられねーだろうな…そう思った。


耳打ちが終わると神楽は顔を真っ赤にし、ヤローのほうを向いて笑った。


ヤツはちょっと照れたような顔で再び車に乗り込むと、すぐにエンジン音をたてて出発し、神楽はごきげんな様子で万事屋へと続く階段を上がっていった。



何やってんだろ、俺…。



電柱の影から出てきた銀時は、ぼんやりとその後ろ姿を眺めていた。

神楽のあんな顔は見たことがない…。
あんな顔もできんのかよ…。

「チッ。」



今は神楽に会いたくない…


なんとなくそんな気分がして、きた道を引き返した。





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