短編小説
□父親の憂鬱
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こんな事になっているなんて、全然考えもしなかった。
あんな大食いでわがままなガキを好きになるヤツなんてそうそう出てこないと思ったし、誰かと付き合うなんてまだまだ先の話だと思っていた。
それがまさか、神楽と土方がそうゆう関係にあるなんて…
…だったらまだサド君のほうが神楽には合っているかも…
…まぁサド君でも許さないけどね。
ったく、神楽もあんな奴のどこがいいんだよ。
あんな黒髪の奴なんて、その辺に沢山いるし…
何、ああゆう年上の大人な感じが良いわけ?
金か?やっぱ金持ってるからか?
何とかいつもの自分のペースを取り戻そうとするが、先ほどの神楽の顔が頭から離れない…
これまで感じたこのとない焦燥感が銀時を掻き立てた。
その時、
「フンッ、冴えねぇ顔してんじゃねぇか・・・」
いま一番聞きたくない声が耳に届いた。
顔を上げるとそこにいたのは、さっき車で走り去っていったはずのアイツ。
「あぁん?テメェ何でここに…」そう言ってから気付いて口をつぐむ。
タバコを咥えたまま、いやらしくニタっと笑って
「車に乗ってただろ…ってか?
さっきミラー越しにすっげぇ怖い顔したテメェが突っ立ってるのが見えたから、どんな顔してんのか近くで見てやろうと思ってな。」
…。
やべー見られてたか…。
体中からジワっと汗が出てきた。
「いやいや、警察がいいのかなぁと思って、あんな未成年に手ぇ出しちゃって…。コレって犯罪だから、今から警察に行こうかなと思っていたんだよ…」
「フン、随分と余裕がねぇじゃねぇか。」
ヤツはタバコの灰を落としながら続けた…
「お父さんには先に挨拶しておいたほうが良いのかと思ってよ。わざわざ来てやったんだぜ?」
「だれがお父さんだよ…勝手にしやがれ。俺には関係ねぇよ。…ったく、てめぇがロリコン野郎だとは知らなかったぜ」
「ロリコンかぁ?アイツはもうガキなんかじゃねぇ…立派な大人だぜ?」
「大人だぁ?」
「いつまでもガキだと思ってんのはテメーだけだよ」
本日2回目の頭を殴られたような衝撃…。
…もういっそのこと、頭が潰れるまで…思考が停止するまで殴って欲しい気分だった。
もうやめてくれ…
腹の中から、真っ黒な何かが溢れてくるのを必死で抑えつけた。
「フンそうかよ、せいぜいお幸せに…ご祝儀は酢昆布とマヨネーズな」
そう言ってオレは振り返り歩きだした。
土方は真っ黒なオーラを放ちながら歩いていく銀髪の後ろ姿を見ていたが、
「なぁんてな。
…せいぜい悩みやがれクソヤロー。」
そういってニヤリと笑い、来た道を引き返した。
つづく…