短編小説
□父親の憂鬱
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門限の時間になると、神楽はきちんと帰ってきた。
もし、門限までに戻らなかったら、傘をもって迎えにいくつもりだった。
「ただいまアル〜」
「おーおかえりー。
神楽ぁ、今日傘忘れてったぞー」
一瞬神楽の肩が揺れたのを、オレは見逃さなかった。
「…あぁそうだったネ。でも傘必要なかったアル」
「ふーん…そう。」
そんなわけがない…。あの天気の中でずっと外に居たのであれば、恐らくぶっ倒れているだろう。
言いたくないならそれでも良いさ。
「お風呂入ってくるネ。」
そう言って神楽はまた俺から逃げるように出て行った。
ほら、また逃げた。
…ったく何なんだよ。銀さん何かしたかよ。
俺はどこにもぶつけることができない苛立ちを消化させるために、ジャンプに集中した。
***
次の日も、またその次の日も神楽は出掛けて行った。
俺はできるだけ気にしないようにしていた。
アイツが誰と居ようが、とやかく言う必要はない。
ただ、あの態度が、神楽の変化が気に食わないのだ。
反抗期ってとこかな…。
俺の予想が当たっていれば、恐らく会っている相手は…真選組の鬼の副長さん。
ガキ捕まえて何が鬼の副長だよ、このロリコンマヨラーめ…と悪態ついてやる。
恐らく神楽のことだ、うまい事言って団子でも奢らせているんだろう。
一見まじめそうな奴ほどムッツリだったりするのに…
今度ちゃんと教えてやらなきゃな…。
そう考えてまたジャンプに目を落とす。
仕事でも入れば気分転換になるのだが、あいにく万事屋ではここ最近ずっと閑古鳥が鳴いている。
新八も寺門通親衛隊の強化練習があるということで、最近は顔すら見せていない。
あの日以来、気がつくと手に取っているジャンプ…
…現実から逃げ出したいような、そんな気持ちでページを開く…
まだ火曜日だというのに、昨日買ったばかりのそれは既にクタクタになっていた…。