短編小説

□遅すぎた男の憂鬱
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川辺の土手でオレはひとり座ってボーっとしていた。

もう何時になったか分からないが、赤く染まる空が視界に入ってきたのでそろそろ夕飯の時間だろうと思った。

今日は夕食当番だった。

きっと神楽が待っているだろう。

ただ、どうしても万事屋に帰りたいと思わなかった

どんな顔でアイツの前に出ればいいんだろうか…




「なんでこんな日に居ねぇんだよ…」

…と新八にも八つ当たりしてみたりした。










神楽ことは本当に大切だし、幸せになってほしい…
ずっとそう思っていた。




将来的に誰と付き合おうが、どこへ行こうが、銀時はすべてを見守るつもりでいた。


だって自分は神楽の仲間で、家族で…俺は父親みてぇなもんだから…




でも、なんでよりによってアイツなの?


土方とは顔を合わせれば喧嘩をするし、相性は最悪だし、本当に嫌いだ。


だが、同じ男として申し分ない相手であることは認めざるを得なかった。


奴もまた自分の信念をしっかりと持っており、それを最後まで貫き通す男だ。

鬼の副長なんざ言われているが、仲間の為だったら自分ひとりでも戦いに行っちまうようなムチャをする…
銀時自身も何かあれば協力してやりたくなるような、そうゆうやつであることは間違いなかった。






これがそのへんにいるようなチャラ男であれば、父親ヅラして

「やめときなさい」

なんて言えるが、アイツに関してはその理由が見つからない。



言えるとすれば、

コレステロール値に気をつけてくださいね〜

…くらいだろう。







まぁ実際は相手がどうこうという問題でもない


改めて考えると今となっては、神楽のいない生活なんて想像できなかった。




新八だって大切な仲間だ。



…でもそれ以上に神楽に対してはもっと違う感情があることに…神楽を手放したくない、誰にも渡したくないと…、そういう気持ちに気付いてしまった。




だが遅すぎた。

もう少し早く気がつけば何かが変わっていただろうか。













「さて、これからどうすっかね〜…」





このまま放っておけば恐らくアイツとハッピーエンド。



何とかしたくたってそんな簡単に阻止できるもんでもない。


なんせ俺に負けないくらい頑固な二人なのだから、そんな弱っちい意志で付き合ってるとは思えなかった。








ガキ相手に真剣になっちゃって…


ずっと一緒いたのに、今更気づいて焦り出す…こんな自分が滑稽で仕方なかった。




−−−ガキじゃねぇよ。







先ほどマヨ野郎が言っていた言葉が頭をよぎる。




たまにはアイツも正しいこと言うのね…


確かにもうアイツの事をガキなんて思えなかった。








もう忘れよう…


この気持ちは無かったことにする…。

どう考えてもこれしか策は無い。

今まで通り…
今まで通り…




帰り道、銀時は何度も自身に言い聞かせた。


***
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