短編小説
□とあるマヨラーの憂鬱
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…ったく、やっぱりほっといて帰れば良かった。
先程泣きそうになっていた少女は何箱目か分からない素昆布を隣で黙々と消費していた。
「トッシーもう一箱追加ネ!」
「テメェーいい加減にしろよ!もういいだろ!さっきっから何箱目だよそれ!」
「13箱ネ」
「あぁそっかぁ…あと一箱で2週間分ですね…あっ、1日一箱計算ですよ…
…っじゃねぇよ!
もういいだろ、どんだけ食うんだよ!」
「さすがトッシー!ノリツッコミができるなんて、ウチの新八より一枚上手ネ!」
あ〜、もうやだぁ…。
…と思いながらも、しぶしぶ素昆布の追加分を買いに行った…。
しばらくして、隣の少女は素昆布で満足した様子だったので、気になった事を聞いてみる事にした。
「お前さ…」
「お前って名前じゃないけどナ…」
いちいちうるせぇが話が進まないので無視だ。
「万事屋と何かあったの?」
「…」
あからさまに変わる顔色…
わかりやすい奴…。
「まぁアイツもかなりのクセ者だからな…グチがあるなら聞いてやるぜ…」
その瞬間、先ほどまで俯いていた少女がバッとこちらをみた
「やっぱりカ!」
「やっぱりあの天パが悪いアルね?」
「いや、まぁ大体はアイツが悪いんじゃねぇの…」
よく意味が分からなかったが、もともとあのヤローの事は好きじゃねぇし…とりあえず、全部アイツのせいにしておいた。
まぁ親子喧嘩ってとこかな…。
「最近、銀ちゃんを見てるとごっさイライラするネ…」
うんうん、分かるよ。非常に分かる。
「とにかく何でも子供扱いネ…門限もあるし、オロナミンCだって1日1本しか飲めないヨ」
まぁガキだからね…オロナミンCはよく分からんが…尿が黄色くなるからか?
「あと、女性にも酒にもだらしないアル」
まぁそうだろうね…
ん?女性?
女っ気あんの?アノヤローに…。
「もう一緒に暮らすのもウンザリネ」
「じゃ…万事屋やめりゃいいじゃん」
「…」
「だって一応アイツが社長だろ?職場が嫌なら辞めればいいだろ?」
「…やめたら楽になるアルか?」
「うーん、分からねーけど、そんなに嫌いなら楽になるんじゃね?」
「そうアルか…」
真剣に悩み始めた少女の横で、俺自身もこの件については気がかりな点があった。
あんなに万事屋を慕っていた少女が、こんなにもアイツを毛嫌いしている点だ。
確かにアイツはクセがあるが、恐らく本気で嫌ってる奴は俺くらいか…
むしろ他の奴らはみんな頼りにしている存在なんじゃないかと感じていた。
この少女について言えば、その気持ちは人一倍強いのではないだろうか…いつも銀ちゃん銀ちゃん言ってベタベタしてたくらいなのに…
…反抗期か?
「あーダメアル!やっぱりどうしたらいいか分からないネ!」
頭を抱える少女にもう一度尋ねてみることにした
「本当に何かあったのか?万事屋と」
今度は少女の方を向いて、真剣に聞いてみる。
べつに万事屋がどうなろうが、自分の知ったこっちゃないが、やはりあの3人がバラバラになってしまうのは、何か違うような気がした。もっと深いとこで繋がっている…そんな奴らだと思っていたから…