短編小説
□とあるマヨラーの憂鬱
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ある日俺は、いつものように見巡り中に行方不明になった総悟を探し歩いていた。
サボらないようにと気をつけているつもりだが、目を離したスキにいつも逃げられる…。
だからと言って、居たら居たで俺の命がまじで危険に晒されるから、できれば毎日どこか遠くで居眠りでもしてくれてりゃ有り難いが、真選組一番隊隊長がそれでは、他の隊員に示しがつかない…
「はぁ…」
俺はタバコの煙とともに大きな溜め息をついた。
総悟出現率の高い公園に着いた。
大体の居場所は頭に入っているので、まずはそこから潰していく…それでも見つからない時は山崎に丸投げするのがいつものスタイルだ。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ。」
公園の入り口に立って辺りを見渡すと、なにやら呻き声が聞こえてきたので、発信源に目を向ける。
「なんだ…万事屋んとこのチャイナか…」
ウチの総悟に匹敵するほどのクソガキが一人ベンチに座りながら頭を抱えていた。
「何やってんだアイツ…」
できることなら無視して立ち去りたい…そう思ったが、根っからの真面目な性格が災いして、渋々声をかけるという選択肢を選ぶ。
チャイナ娘は俺が近づくと気配を感じて顔を上げた。
「何だトッシーアルか」
「何だじゃねぇよ。てめぇ公園で何やってんだよ。そんな気合溜めて、変身でもするつもりか?」
「違うアル。こんなんで変身できたら、銀ちゃんはもうスーパーサイヤ人になれてるネ。いつも隠れて練習してるアル。
あっ。トッシーも勘違いしてるアルか?
あれは漫画の中の話アル…残念だけどいくら修行してもサイヤ人にはなれないアルよ」
「知ってるわ!」
やっぱりコイツもクセ者だ…
声をかけたことを後悔した。
「んじゃ何してたんだよ…」
「乙女にはいろいろ悩み事があるネ。」
誰が乙女だよ…と思ったが勿論口には出さない。
「ふーん…」
「お前らみたいに税金でのうのうと暮らしてるわけじゃないアル。」
かっわいくねー。
まじ殴りてぇ。
「そ、そうか…。んじゃ紛らわしい悩み方すんなや。」
とりあえず適当に流してこの場を立ち去ろう…そう思った。
「悩み方まで警察にとやかく言われなきゃいけないアルか?
住みにくい街になりましたねー歌舞伎町も」
かっちーん。
何なのコイツ。
ムカつくよー
切りたい!切り倒したいよー!
「あーいえばこーゆうだな!保護者そっくりだぜ!そのうち天パになるぞ!」
そう言って今度こそ立ち去ろうとした時だった…
…さっきまでの穏やかな空気が変わった。ピリッとした緊張感が走る。
発生源はこの憎たらしい小娘…か…?
「…ちゃんは…」
「?」
「銀ちゃんは保護者じゃないアル!」
そう言って俺を押しのけて、走り去ろうとした。
咄嗟のことだった。
俺は無意識にチャイナ娘の手首を掴んだ
「ちょっとまて!」
振り返った少女の目には今にも溢れ出しそうな涙が溜まっていた。