短編小説

□とあるマヨラーの休日
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チャイナを送って行った次の日の朝、俺は非番だったのでのんびりとコーヒーを飲んでいた。


コンコン



窓ガラスをノックする音。


まだ朝の7時だ。
こんな早朝に誰だよと思いながらも、何となく予想はついていた。

「ヨッ」

オレンジ頭がひょっこり顔を出した。



「なんだよこんな朝っぱらから…」


文句を言いながらも、内心はホッとしていた。

昨日手紙を渡してどうなったのか気になっていたから…。


「お邪魔しますヨ〜」






堂々と不法侵入してきたチャイナは心なしか目が腫れているように見えた。



失敗したか?




そう思って、チャイナの言葉を待った。



「銀ちゃんに…


好きって言われたアル」



ブーーーーっ!!


おれは口に含んでいたコーヒーを一気に吐き出した。


「汚っ!トッシー汚いネ!」


「悪ぃ…」



なんだそれー
超笑えるだろー
まさかマジで告るなんてなー




アイツがこの少女に惚れてるのは前々から気付いていた。

だってコイツが総悟やオレと話してる時のオーラはハンパないから。



多分自分では気付いてないんだろうが、そんな余裕の無い奴を見るのが楽しくて仕方なかった。





一方、この少女についてはあの日公園で相談を受けるまで、サッパリ読めなかった。


それこそ、総悟と一緒に居る方が楽しいのかと思ったりしたこともあったが、やっぱりこの少女の中で銀髪の存在は絶大だった。


今回の件についても本人は気付いて無かったが、早く一人の女として見て欲しいと言っているようにしか思えなかった。





この二人…何だかんだ言いながらもずっと一緒に居れば、いずれお互いの想いは通じるだろうと…焦ることはないと…そう考えていたが、あまりにも一生懸命な少女を応援してやりたい気持ちと、こんなにも大切に想われてるあのヤローが憎たらしくなって、わざわざケンカをふっかけに行ったのだった。



自分の作戦に見事にハマってくれたテンパを思い出して、必死に笑いをこらえた。



「トッシー、私はどうしたらいいアルか?」

少女の頼りない声で現実に引き戻される。
表情は真剣そのもので、顔に出してないとは言え心の中で大爆笑した自分を反省した。


「どうって、お前はどう思ったんだよ」


「分からないアル…。でも…でも、ごっさ嬉しかったネ。涙がいっぱい出てきたアル…」



「そか…良かったじゃん」


「良かったアルか?」


「好きなんだろ…アイツのこと」


「そうなのカ?」


「そうなんじゃね?」




そう言ってコーヒーをぶちまけた着物を拭きながら少女を見ると、耳を真っ赤にして俯いていた。


(可愛いリアクションもできんのな…)

コレがアイツを想っての反応かと思うとイラッとしたが、普段より大人しく可愛らしい少女に免じて許してやることにした。


オレンジ頭に手を伸ばしてグシャグシャ撫でてやる。

「ホレ、早く帰らねーと。
お前が居なかったら銀髪が起きた時にまた大騒ぎすんぞ。」


「そうアルな!」

顔を上げてニッコリと笑う。


「トッシーほんとにありがとネ。」
そう言って少女はまた窓から出て行った。

「玄関を使え玄関を!」


嵐のように去って行った少女の後ろ姿を見て思う。

…たしかにアイツの気持ちも分からないでもないかな…。

…イヤイヤ俺はロリコンじゃないよ!



そんな事を考えながらも、頭には別の女性が浮かんでいた。

いい天気だし、墓参りでも行きますかね…

そう言って本日一本目のタバコに火を付けた。




おわり

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