短編小説
□だきしめたい
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え…ちょ…。
か…かぐらぁ??
何、どうしたの?
急に立ち止まって…。
さっきから明らかに様子が変なんですけど…
不機嫌じゃね?
なんか不機嫌じゃね?
あぁ…もうやだぁ…こんな状況で告白なんかしたって、絶対無理だからね…もう絶対にうまくいかないからね…。
…って、うぉい!
近いよ神楽ちゃん!
いつの間に目の前に居たのォ?
こんな切羽詰まった顔して…
神楽がこんな顔してるのって…エリザベス救出のためにお庭番達と戦って、間違って下剤飲んだときくらいじゃねぇの??
ったく〜、はっきり言えよウンコくらい…。
そんな恥じらう仲じゃねぇだろ??
あ〜ぁ、残念です。
銀さん非常に残念ですよ…
昔は一緒にバカやったのに…ウンコも言えねぇ関係になっちまうなんてな…
んで??
何このネコパンチは??
お前いつからこんな女みてぇなパンチするようになった??
神楽?
オイ神楽、
一体どうしたんだよ…
こんな近くにいつまでもいると…
銀さん抱きしめちゃうよ…?
いいの?
「−−−。」
え?
神楽…お前…
今…何て?
俺が…
好きって言った?
な…んで?
マジでか?
神楽が…俺を?
ウソみてぇだけど…
夢みてぇだけど…
コイツのこの顔は…本気だ。
何より、先ほどから掴んでいる左腕が小刻みに震えている…。
この腕を放したら、崩れちまうんじゃねぇかと思うくらい…
それなのに…さっきから青い瞳は俺をジッと見て、逸らそうとしない。
やっぱすげぇな…お前は…。
本当はいますぐ泣き出したいんだろ?
逃げ出したいんだろ?
俺だったらそうだもん。こんなの耐えられねぇよ。
…目ん玉の中に涙をいっぱい溜めながら、俺が次に喋り出すのをじっと待っているお前は、やっぱ強ぇと思う。
なぁ神楽…知ってた…?
俺はお前のそんなところに、惹かれてるんだぜ?
結局大事なこと、お前に言わせちまって…。
そんな不安そうな顔すんなよ…。
大丈夫…安心していいから…。
「俺も」
好きだから、の部分は声にならなかったけど…
俺は掴んだままの腕を引き寄せると、自分の中に神楽を包み込んだ。
何が起こったのか分からないとゆう雰囲気の神楽に、もう一度だけ囁いた
「神楽、俺もだよ…」
神楽は泣きながら、ぎんちゃんぎんちゃんと何度も俺の名前を呼んでいた。
こんな時に、気の利いた台詞のひとつも出てきやしねぇ…
まだ震えるお前を強く抱きしめるくらいしか、今の俺にはできないみたいだ。
*