短編小説
□キスしたい…!?
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《神楽side》
長い長い沈黙だった…
苦しかった…
ダメだと思った…
溢れてきそうな涙をグッとこらえて、私はただ銀ちゃんを見つめた。
…ここで目を逸らしてはいけない。
銀ちゃんはこうゆう分野がすごく苦手な事を私は知っている。
さっちゃんだっていつも真剣なのに、銀ちゃんがまともに向き合った所を見たことがないのだ。
結果がどうであれ、ちゃんとした返事を聞くまでは…
ふいに、温かい空気が自分を包み込んだ。
銀ちゃんが何を言ったのかはよく聞こえなかったけど、私は気がついたら銀ちゃんの胸の中に居た。
「神楽、俺もだよ…」
いつもより少し震えた銀ちゃんの声が、私の耳に届いた瞬間、我慢していた涙が一気に溢れて出てきた。
***
銀ちゃんの胸の中はあまりにも心地良くて、ずっとこのままでいて欲しいと思った。
でも、しばらくすると銀ちゃんは、
「よし、帰るか…」
と言って立ち上がり私の頭をポンと叩いた。
一気に現実に引き戻されたようで、全部夢だったんじゃないか…まさかドッキリだったのか…嫌な想像ばかりが膨らみ、急に不安になる。
すると銀ちゃんは、「ホレ」と言って右手を差し出してくれた。
ずっと求めていたものが目の前に差し出された…なんだか簡単に手を取ってしまっては、勿体無いような気分になる。
私は嬉しさを隠すために、とりあえず日傘を手渡してみた。
「あぁ、そうコレコレ!紫外線はお肌に悪いですからね〜
…って、違うわー!」
そう言って銀ちゃんは私の右手に開いた日傘を握らせると、私の左手をグッと引き寄せた。
「ふざけてねぇでとっとと帰るぞ…」
万事屋への帰り道、ぎんちゃんのいつも暇そうだった右手には私の手が重なった…。
いつもはたわいもない会話をする私達だけど、意外にも緊張してしまって、何を話したらいいのか分からなかった。
それは銀ちゃんも一緒で、握った手には汗をかいていた。
普段の私なら
気持ち悪いネ!なんて言うけど、なんだかこれだけで嬉しくなる。
「何ニヤニヤしてんだよ。」
「べつにぃ…」
それでも余裕ぶってる銀ちゃんが可笑しくてしょうがない。
「あっ、銀ちゃん!」
「んあ?」
「そういえば、依頼って何アルか?」
「あー」
銀ちゃんはボリボリと頭を掻いている。
「あ〜アレだよ…アレ…」
「アレって何アルか?はっきり言うヨロシ!」
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