短編小説
□年越し
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見ると神楽の手は俺の着流しをきゅっと掴んでいた。
こんな嬉しいことされても、今は溜め息をつくくらいしかできない…。
−−なぁ神楽…?
あとどのくらい、俺達はこの関係のまま新年を迎えられる?
お前がハゲオヤジと旅立つまでか?
それとも、
それとも俺が我慢できなくなるまで…?
ここ最近自分の中に芽生えてきた新しい感情は凄まじいスピードで大きくなり、確実に自分を支配し初めていた。
今、自分を抑えているものは『万事屋を壊したくない』とゆう想い…。
でもそれ以上に、父親(仮)という立場に満足できない自分が強くなってきているように思う。
俺はできた人間じゃねぇから、そんなに長い間自分を制御することなんてできないだろう…。
ましてや一つ屋根の下で毎日暮らしてるんだから、俺のちゃっちい制御機能なんてすぐに使いモノにならなくなる。
1年後の今日…
俺はどんな気持ちで新年を迎えるんだろうな…。
どちらにしても、今の関係のままの俺達は、そこにはいない。
下手したら一人淋しく年越しソバかもな…
あ〜明日おみくじ買おう…
そんな事を一人考えていた銀時だったが、気がつくと時計は0時を指そうとしていた。
眠る少女を気遣い、これから更に盛り上がるであろうテレビの音量を少し下げた。
そして、カウントダウンを終えた、つけっぱなしのテレビにまず一言。
「はい、あけおめ〜」
そして新年の一番最初のご挨拶は、隣で眠る愛しい少女に囁く…
「神楽…今年もよろしくな。」
今年はどんな一年になるのだろうか。
…いや、
いい一年になりますように…。
そして自分も、少女の隣で眠りについたのだった。
おわり