短編
□色彩
1ページ/2ページ
どうしたらいいかわからないこの気持ちに気づいたのは、気持ちよりも体が先に反応した時。
ふいに至近距離で触れられて。
心臓が止まったかのような錯覚を起こして、次の瞬間それは心臓が大きく脈を打ったのだと気づいた。
本当にどうしようかと思った。
何で、とか。
よりによって、とか。
男なのに、とか。
冷静になれば浮かんでくる言葉たちはそれよりも強い感情に気圧されていく。
「ナールト、ほら行くぞ」
その声にハッとしてナルトは顔を上げた。
「お、おうっ」
後ろからついて歩きながら、軽く頭を振って意識を任務へ引き戻す。
少し前を歩く背中は若干猫背で、その手の中では愛読書が静かに捲られている。
いつもと同じ風景なのに。
揺れる銀髪から目を逸らせない。
そうしていると、再び思考はさっきと同じところへ辿り着く。
(なんでカカシ先生なんだ・・・?)
この心がやたらと騒ぎ出すのは、決まってカカシが傍にいる時。
自分のこととはいえ、同じ班のしかも一回り以上離れた師でもあるカカシに対してこんな反応されたら困る。
何より男同士で。
なのにこうして後ろから眺めていると、振り返ってほしいと思う。
後ろじゃなくて隣を歩きたい。
その口布で覆われた先には、どんなカカシがいるのか気になって仕方ない。
(意味わかんねぇよ・・・・)
持て余す自分の感情をコントロールなんてできなくて、ナルトはため息を零した。
最近のナルトはこんな風に元気がないことが多い。
周りは煩いとそれはそれで迷惑だったりするのだが、いざ静かになるとナルトに何かあったのかと皆心配の目を向けていた。
それは師であるカカシも例外ではなく、いつも以上に休憩をこまめに取ったり声をかけてみたりとナルトの様子を気にかけていた。
しかしナルトにはそれが返って逆効果で。
カカシが傍に寄れば目線を外し、顔を覗き込めば明らかに挙動不審になる。
しまいには「なんでもねぇってば!!」と走り去っていく。
カカシは懐いていたナルトのその反応に軽く傷ついていた。
(なんだかねぇ・・・。その割にはやたら視線を感じるし・・・)
そう。
近づくと拒絶するかのように避けるのに、そうでない時はやけにナルトの視線を感じるのだ。
探るかのような視線に、カカシは内心首を傾げる。